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《本記事のポイント》
- アメリカの大学に中国共産党支部が設立された
- 支部は解散したが、共産党直轄の組織は世界中に展開している
- 中国政府によるプロパガンダに対抗すべき
中国共産党が、アメリカでのプロパガンダ(政治的な意味を持った宣伝)戦略を強化している。
中国人の客員教授らが、米カリフォルニア大学デービス校で中国共産党支部を立ち上げていたことを、このほど複数のメディアが報じた。支部を設立したのは、同校に務める中国・大連理工大学の客員教授Mu Xingsen(ムー・シンセン)氏ら。党の思想を学び、欧米の思想から身を守ることが目的だった。
今月4日に行われた初のミーティングでは、10月に北京で開かれた第19回中国党大会で習近平国家主席が発表した新しい方針について学んだ。しかし、支部の設立が現地の法律に違反しかねないことが分かり、すぐに自主解散したという。
139カ国、1500カ所以上に設立されている「孔子学院」
中国共産党の正式な支部は解散したものの、中国政府は世界中でさまざまな手段を用いてプロパガンダを行っている。世界各国に展開する「孔子学院」はその代表だ。同学院は、中国政府直属の中国語や中国文化の教育機関。小学校から高等学校向けの「孔子課堂」を含め、2016年までに139カ国で1500カ所以上に設立している。日本でも、早稲田大学や立命館大学、桜美林大学や武蔵野大学などに設立されている。
しかし、中国政府が管轄する孔子学院の授業では、共産党がタブーとする天安門事件や法輪功、チベットなどの民主化運動や人権問題に関するテーマに一切触れない。また、アメリカの大学がチベット亡命政府のダライ・ラマ師を講演に招いた際、介入して講演を中止させたこともあったという。
こうした状況を受け、アメリカ国内からは「学問の自由を侵害している」との批判の声も高まっている。
アメリカの大学教授協会は2014年、孔子学院をキャンパス内に誘致した大学に向けて、設置の是非を再検討するよう声明を出した。声明では、「孔子学院は中国国家の手足として機能しており、『学問の自由』が無視されている」と、教育機関としてのあり方に疑問を呈している。また、孔子学院の闇を暴くドキュメンタリー映画、「偽りの儒教(In the name of Confucius)」も、2016年に公開されている。
孔子学院の「文化交流」「教育」という仮面は、はがれつつある。
中国的な価値観を輸出しようとする中国
今回、カリフォルニア大学デービス校内に設立された、中国共産党支部は表向き解散した。
しかし、10月の党大会で、習主席は「新時代の中国の特色ある社会主義」を掲げ、欧米の自由主義思想と戦う姿勢を明らかにしている。今後も、中国共産党政府の正当性を世界に示すために、さまざまな手段で共産主義思想を他国に"輸出"しようとするだろう。支部という形をとらずとも、中国政府直轄の"民間組織"が世界各国で新たにつくられる可能性もある。
各国は、組織の名前や肩書に惑わされず、活動の実態で判断していかなければならない。日本としても、今回の事件を「対岸の火事」として傍観するのでなく、「スパイ防止法」のようなものをつくり、国内をかく乱されないよう自衛手段を整えるべきだ。
(片岡眞有子)
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