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《本記事のポイント》

  • 習近平演説は「21世紀における最も重要な演説」
  • 中国が覇権を握る3つの戦略
  • 「中国はパートナーではなく敵と気付くべき」

トランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問を8月まで務め、「大統領の最側近」「陰の大統領」とも言われていたスティーブン・バノン氏。同氏は現在でも、トランプ氏と頻繁に連絡を取り、政権をサポートしているという。

そんなバノン氏がこのほど来日し、都内で中国の人権問題について「諸民族青年リーダー研修会」で「Forging an Alliance of Asian Democracies Responding to China's Influence and Threats(中国の影響と脅威に対応するためにアジアの民主国家で同盟を形成する)」と題する講演を行った。講演は中国大使館によって中止の圧力がかかる中で、行われた。

バノン氏は、「中国の脅威」と「労働者階級が世界的に台頭している意味」について語った。その内容は、トランプ氏の本心を垣間見られるものと言える。本欄では、そのポイントを紹介していきたい。今回はその前編。

習近平演説は「21世紀における最も重要な演説」

中国共産党第19回全国代表大会において、習近平総書記は3時間半の演説を行った。

バノン氏はその驚愕の内容に注目。2035年までに経済的な覇権を握り、2050年までに世界のリーダーを目指す意志を表明したとして、「21世紀における最も重要なスピーチ」で、「全世界に対する警鐘」であったと訴えた。

バノン氏は、「後になって、『全てはあのスピーチから始まったんだ』と振り返ることになるでしょう」「(演説は)西側に対して警告以上のものを意味します。というのも、要するに彼は、中国の儒教的な重商主義的で専制的なモデルが勝利し、ユダヤ・キリスト教的な自由で民主的な資本主義という西側のモデルは負けた、と言っていたからです」とも警告した。

また、欧米メディアがその詳細について、まともな報道をしなかったことを批判した。

中国が覇権を握る3つの戦略

これに続けてバノン氏は、中国には、覇権拡大に向けた3つの戦略があるとして、その概要を以下のようにまとめた。

1つ目は、国際規模で製造業をコントロールするために、ある重要な産業で優位に立つことである。具体的にはシリコンチップの製造、ロボットの製造、AI(人工知能)など、10の産業分野で2025年までに優位に立つことだ。バノン氏は、「これら相互の産業が合わさると、21世紀の国際規模の製造業で中国が支配的な地位に立ちます」と述べた。

2つ目は、「一帯一路」の交易を通じて、経済的、文化的、政治的影響を与えることである。

その構想は、世界をランドパワーとシーパワーとに分け、地政学的な戦略を練ったマハン、マッキンダー、スパイクマンを統合する考え方であると指摘。つまり、地政学的に見ても、覇権拡大への近道になっているということだ。

さらに、バノン氏は、「一帯一路政策が中国と中東をつなぐと、イスラーム復興主義を取る国と中国が連携する危険性がある」との予測も行っている。

3つ目は、西側が中国に制裁を課すことができないレベルになるまで、金融技術を発展させつつ、米ドルに取って代わるという野望だ。

「中国はパートナーではなく敵と気付くべき」

また中国は、「中国市場に参入したければ、技術をよこせ」と非公式で外資に技術移転を迫る慣行を長年行ってきた。

この問題についてバノン氏は、中国が自由で民主的な市場のシステムの華である「イノベーション」を収奪したと非難。3.5兆ドルもの技術移転は「貢物」以外の何物でもないとして、トランプ政権は、通商法301条による調査を開始したと述べた。

そして、「これまでアメリカのエリートたちは、もし中国が経済的に発展したら、中国は市場を尊重した自由な民主主義国になると信じてきましたが、結果は全く逆でした。中国は戦略的パートナーではなく、敵だと認識しなければなりません」と述べ、エリート階級が意図的に中国の台頭に目を瞑ってきたことを厳しく批判した。(後編に続く)

(長華子)

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