《本記事のポイント》
- 政府が認可保育所に加えて、認可外保育所にも補助金を出す方針を固めた
- 認可外施設の規制も強化され、多様なニーズに合わせたサービスができなくなる可能性も
- そもそも保育・教育無償化は、家族の絆を失わせ、国の財政も圧迫する危険な政策
「幼児教育・保育の無償化」の問題をめぐり、このほど政府は、認可保育所に加えて、認可外保育所にも補助金を出す方針を固めた。
政府はもともと、国が定めた設置基準を満たす「認可保育所」の利用料は無償化するが、「認可外保育所」は無償化の対象に含めないという方針だった。その背景には、すべての保育料を無償化するための財源確保が難しいことや、保育士の配置基準などが緩い認可外施設を国が推奨しているとみられかねないとの懸念があった。
しかし、政府が今月上旬にその方針を発表した後、本当は認可保育所に通わせたいが、選考に漏れたので認可外保育所に子供を通わせている子育て世帯などから、「不公平だ」「認可と認可外の格差を拡大させるだけ」といった反発が相次いだ。
政府はこうした不満の声を受け、方針を転換。認可外保育所の利用者に月額2万5700円を上限に支給する方向で調整している。
ここで注目すべきは、政府が「保育の質を確保するために、認可外保育施設への指導、監督を強化することを検討する」としていることだ。さらに、この補助金はあくまでも経過的措置であり、将来的には認可保育園への転換を促進していく考えだという。
認可外保育園への規制強化のデメリット
東京都内の認可外保育園で園長を務めていた女性は、こうした無償化の方向性について、不安を語る。
「働くお母さんの中には、子供を預けて働きに出ることに罪悪感を覚えている人もいます。『幼児教育にお金をかけたい』という人も実は多いんです。
認可外保育所の中には、英語教育に力を入れるなどの付加価値を提供したり、23時まで子供を預かるなどのサービスを提供したりして、通常よりも高い保育料を設定している所もあります。
政府が補助金を出す代わりに、認可保育所のように一律に規制をかけることで、こうしたサービスが制限されるかもしれません。保育士がサービスを工夫するやる気を失ったり、多様化するニーズに応えられなくなったりするデメリットもあります」
この補助金の"代償"について、東京都内で認可保育所を経営する男性は、本誌2016年6月号で、次のように語っていた。
「補助金の仕組みは複雑で、書類づくりに忙殺されています。補助金のことで頭がいっぱいで、サービスを良くしたり、事業を拡大することに目が向きません」
認可外保育所への補助金が、サービスの足かせにならないような制度設計が求められる。
無償化で親子の絆が薄れる恐れも
そもそも、本当に、すべての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化する必要はあるのだろうか。
前出の元園長の女性はこう語る。
「保育園に子供を預けているお母さんの中には、家計の事情で、子供を保育園に預けて働かないとやっていけないという人だけでなく、『働きに出たいから働く』というキャリアママもたくさんいます。保育料が無償化されることで、そういうお母さんも次々と保育園に子供を預けるようになり、待機児童問題がさらに悪化する恐れがあります」
また、保育も教育も国任せの政策は、一見親切だが、実は健全な家族の絆を失わせることになりかねない。
「親が一生懸命働き、教育を受けさせてくれた」という思いが親への感謝に変わり、「将来は親の面倒を見よう」という報恩の精神につながる。しかし、国が保育や教育にかかる費用を無償化することで、「親に育てられた」というよりも、「国に育てられた」と感じ、大きくなった後も親孝行しない子供になる可能性もある。そうなれば、親の介護も当然のように国任せになり、国家財政が圧迫される。教育無償化は、親切に見えて、実は危険な政策と言えるかもしれない。
(小林真由美)
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