《本記事のポイント》
- 前川証言の報道量は2時間で、反対派の証言は8分強
- 憲法に想定されていないマスコミの「黙殺権」
- 多チャンネル化で、テレビはもっと公平で、面白くなる
「加計問題」についてのテレビ報道に関し、「放送法遵守を求める視聴者の会」は、22日付の読売新聞・産経新聞の朝刊に意見広告を掲載した。
同問題が議論された国会の閉会中審査では、3人の参考人が呼ばれた。そのうち、文科省側の意見を代表したのが、「行政が歪められた」と主張した前川喜平・前文部科学事務次官だった。意見広告によると、その発言を取り上げた放送時間は2時間33分46秒だったという。
一方、加計学園・官邸側の意見を代表する参考人として呼ばれたのが、加戸守行・前愛媛県知事と、原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員。両者は、「歪められた行政が正された」「規制改革のプロセスに一点の曇りもない」と、前川氏の主張に反論した。
ただ、その内容どころか、名前さえ知らなかった人も多いだろう。なんと彼らの発言の報道時間はそれぞれ、6分1秒、2分35秒しかなかったのだ。足しても、前川氏の発言の19分の1だ。
こうした放送時間の格差に関して意見広告では、「テレビ局のみなさん、国民の知る権利を守るために、放送法第4条を守ってください」と訴えている。
放送法第4条では、テレビ局に対して、「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を定めている。
報道が「権力」になっている
こうした偏向報道が問題なのは、単に「知る権利を侵しているから」だけではない。真の問題は、それが「権力」そのものになっていることだ。
今回の「加計問題」では、前川氏の発言など「親文科省・反官邸」の内容ばかりが報道された。その結果、安倍政権は支持率を大きく下げ、内閣改造を余儀なくされた。北朝鮮問題などで国際情勢が切迫するこの時期に、外交・防衛政策を大きく左右したことは間違いない。このマスコミの力を「権力」と言わずして何と言うのか。
日本の政治や経済の局面が大きく動く時には、必ずと言っていいほど、マスコミの「権力」がちらつく。
「都民ファーストの会」が大躍進した先の東京都議選での報道量調査では、議員が5人しかいない「都民ファーストの会」に関する報道が、全体の30%と最大だった。一方、議員数が58人おり、立候補者数も勝る自民党の報道量は23%と少なかった。
その結果、マスコミが描いた構図通り、「小池旋風」が吹き、「都民ファーストの会」は最大党派となった。この結果は、もちろん都政にダイレクトに影響を与えている。
(編集部調査 http://the-liberty.com/article.php?item_id=13201 参照)。
2009年の衆院選においても、マスコミは「政権交代」を叫ぶ民主党ばかりを報道した。一方、自民党政権については、麻生太郎首相(当時)が「未曾有」を言い間違えたなどといったネガティブな面ばかりを報じた。結果的に、政権交代を実現させた。
憲法に想定されていない「黙殺権」
マスコミは「何かを取り上げ、何かを取り上げない」という「黙殺権」によって、日本の政治を大きく動かしてきた。
私たちは学校で、「日本の憲法や政治では、行政・立法・司法という権力が、互いにチェックし合っている」と習った。しかし、内閣(行政)も、国会(立法)も、最高裁(司法)も動かせるマスコミの「黙殺権」は、憲法に想定されておらず、誰のチェックを受けることもない。
この状況は、国家システムの大きな欠陥として、もっと議論されてしかるべきだ。
「多チャンネル化」で「黙殺権」を破る
マスコミの「黙殺権」をけん制するためにできることとしては、例えば「テレビ新規参入の自由化」が挙げられる。
公共の電波には空いた周波数帯があり、500チャンネルほどは新規開設できるだろう。そうすれば、もっと高い電波利用料を払ってでも参入したい企業はいくらでもある。
米英では80年代から多チャンネル化が進んでいる。
多くのチャンネルがあれば、マスコミは談合して何かを「黙殺」することはできなくなる。視聴者も、様々なチャンネルを比較することで、番組内容の偏りをすぐに見抜くことができる。
そして何より、視聴者も時事問題などに対して様々な視点を知ることができ、単純にテレビが面白くなるだろう。
(馬場光太郎)
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2017年6月29日付本欄 都議選報道 議員5人の「都民ファースト」は30%、62人の「その他」は6%
http://the-liberty.com/article.php?item_id=13201
2016年7月24日付本欄 【都知事選】"主要3候補"以外の報道時間は3% 非"主要"候補者が共同記者会見