《本記事のポイント》
- イギリスがガソリン車などの新規販売を2040年までに禁止すると発表
- 「脱石油」の潮流はもはや避けられない
- 日本はこれをビジネス発展と発言力を高めるチャンスにすべき
「脱石油」が世界的な潮流となってきている。
イギリスのマイケル・ゴーブ環境相がこのほど、2040年までにガソリン車やディーゼル車の新規販売を全面的に禁止すると発表した。ゴーブ氏は「新車販売の禁止により(10年間で)ディーゼル車とガソリン車を全廃する」「ディーゼル車とガソリン車では持続できない」などと語っている。
最近では、フランスにおいても同様の発表があったほか、自動車大国のドイツでも2030年までにガソリン車などの販売を禁止する決議案が、昨年秋に国会で採択された。
「脱石油」の流れは避けられない
大気汚染などの環境問題や、代替エネルギーの登場などにより、将来的には石油の需要が下がると見られ、現在の原油価格についても、低水準にとどまっている。化石燃料の永続性も保証されているわけではなく、長い目で見れば、「脱石油」の流れはもはや避けられないだろう。
それに伴い、今まで石油を国家産業の基幹としてきたアラブの石油国は、国のあり方自体を見直す必要に迫られている。石油依存から脱却できなければ、待っているのは衰退の未来であるためだ。
対する日本は、資源小国から経済大国へと発展させた実績がある。日本には、この実績を生かして、中東諸国に国を豊かにする方法を伝えていく役割があるのではないだろうか。幸いなことに、中東には親日的な国も多い。
サウジアラビアが期待する日本の協力
そうした動きは、すでに始まっている。
サウジアラビアでは、昨年4月にムハンマド副皇太子の主導のもとで、石油依存脱却を目指す改革計画「サウジ・ビジョン2030」を策定。石油以外の産業の育成や雇用創出などに取り組んでいる。
今年7月中旬には、同国のサルマン国王が、閣僚や企業幹部など1000人以上を引き連れて来日。2030年に向けた日本・サウジ間における経済協力、「日・サウジ・ビジョン2030」を発表した。
この経済協力は、日本の自動車や重工業などの高い技術力を活用し、サウジ国内の製造業の成長を目指すほか、エネルギーや農業・食料、医療・健康、インフラ整備などでも協力関係を強化し、新しい産業の発展につなげようというものだ。
石油が輸出総額の9割を占めるサウジは、未来に向けて変わり始めている。
脱石油の潮流を日本の発言力を高めるチャンスに
確かに日本は、電気自動車の分野でも高い技術力を持っている。そうした技術力を積極的に向上させ、世界をリードしていくことのできる立場にある。
ただ、従来の途上国に対する経済協力は、金銭面での援助が多かった。そうではなく、技術供与や人材育成を通じて富を築く、言わば"魚の釣り方"を教える支援に軸足を置くべきであろう。
国を豊かにする方法を伝え、ともに繁栄を実現していく先に、日本がアジアの発展をリードする未来も見えてくる。欧米とも融和的な日本が、中東での発言力を高めることは、世界的な融和にもつながるだろう。(花)
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