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《本記事のポイント》
- 米俳優リチャード・ギアが、反中発言のためにハリウッド映画の仕事を干されている。
- ハリウッドでは、世界第2位の映画市場を持つ中国の影響力が大きくなっている。
- ハリウッドでも、中国政府の人権侵害などの誤りを正すなどの「正義」が必要だ。
映画「アメリカン・ジゴロ」や「プリティ・ウーマン」などに出演し、1980年代ごろからハリウッドの大手スタジオのトップ俳優として活躍していたリチャード・ギア氏。
しかし、熱心なチベット仏教徒かつ人道主義者であるギア氏は、公の場で中国の人権侵害などについて繰り返し訴えた結果、現在はハリウッドから事実上の「追放状態」にある。
中国におもねるハリウッド
中国は今や、アメリカに次いで世界第2位の映画市場だ。2017年には、アメリカを抜いて世界最大の映画市場になると言われている。それゆえに、中国がハリウッドに与える影響も大きくなっている。
ギア氏は米映画紙「ハリウッド・レポーター」(4月18日付)のインタビューで、中国側に映画への出演を拒否されていることを明かしている。
ギア氏は、「中国が『彼が出ているならダメだ』と言うだろうという理由で出演できなかった映画は何本もある。最近も、僕が出ていたら中国を怒らせるだろうとして、出資はできないという話を聞いたばかりだ」と述べた。
また、ハリウッド映画だけでなく小規模の映画からも外された経験もあるという。
「中国人監督との仕事の話が持ち上がったとき、撮影が始まる2週間前にその監督が電話で『申し訳ないけど、やれない』と言ってきた」「もしその監督と仕事をしたら、彼とその家族は2度と国から出ることを許されず、仕事もさせてもらえないと極秘電話で言っていた」
信念を曲げずに中国政府の誤りを訴え続けるギア氏
中国政府はギア氏を「入国禁止人物」としている。ギア氏のどのような言動が中国の癇に障ったのか。代表的なものは以下の通り。
- 1993年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めた際、台本を無視し、中国によるチベット抑圧は「恐ろしく人権が侵害された状態」だと非難。激怒したプロデューサーに出入りを禁止される。
- 人権弾圧に抗議するため、2008年の北京オリンピックのボイコットを訴えた。
- 2012年にはインドで行われた仏教イベントで、中国について「世界で最も偽善的な国」と語った。
- 2016年には米下院議会の人権委員会公聴会に招かれ、獄中死したチベット高僧の写真を掲げ、「チベット人の信教の自由が侵害され、厳しい人権状況と不正に耐えている」ことについて語った。
ハリウッドにも正義が必要
ギア氏の主張の通り、中国政府がチベット仏教徒などの人権を侵害していることは周知の事実だ。ハリウッドでの仕事が激減しても自らの信条を曲げないギア氏に、敬意を示す人も多いのではないか。
ギア氏自身はというと、ハリウッドの大作に出演できないことは気にしていないという。
「スタジオ側は大金を稼ぎ出す可能性に興味を持っているけれど、僕は始めたころと変わらない映画を作り続けている。小規模で、面白く、キャラクターや物語によるものだ。だからこのことは僕の人生に全く影響を与えていない」(「ハリウッド・レポーター」のインタビューより)
言論の自由が保障されているアメリカにおいて、チベットやウイグルなどの少数民族に対する人権侵害を繰り返す中国政府を批判することには、本来、何の問題もないはずだ。ギア氏を「入国禁止」にする中国や、正論を主張すると仕事がなくなったりするハリウッドにこそ問題があるのではないか。ハリウッドにも、正しいことを推し進め、間違っていることを押しとどめる「正義」が必要だ。
(小林真由美)
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