文科省の天下りあっせん問題の最終報告を報じる31日付各紙。

《本記事のポイント》

  • 文科省の天下りあっせん問題で最終報告書が公表された。
  • 文科省は日常的に違法な天下りあっせんや情報漏洩などの「不正」を行っていた。
  • 大学設置・学校法人審議会が学長人事に口を挟むことに正当性はない。

文部科学省の天下りあっせん問題で、3月30日、最終報告書が公表された。2月の中間報告後、新たに35件の国家公務員法違反が判明し、違法事案は合計で62件以上に上った。

今回の問題で処分の対象となったのは合計43人。ひとつの問題での処分の数としては過去最多だという。

だが、文科省の不祥事は天下りあっせんだけではない。調査の過程では、守秘義務違反、情報漏洩も明らかになった。

新しい大学や学部の設置を審議する「大学設置・学校法人審議会」の審査情報が、対象の大学に伝えられる前に、設置審査とは無関係の文科省人事課に伝えられていたのだ。

日常的な不正行為

文科省の指揮の下、天下りのあっせんを行っていた人事課OBの嶋貫和男氏は、文科省退官後、学校法人滋慶学園特別顧問に就任した。

2014年3月、同学校法人は滋慶大学(通信教育課程)の設置認可申請を行った。その際の学長予定者が嶋貫氏だった。

だが、審議会は嶋貫氏を学長候補とは認められないとして「是正意見」を出した。

この情報がなぜか審議会とは無関係の人事課に伝わった。さらに、人事課職員と大学設置審査担当の職員は、「ほとぼりが冷めるまで、嶋貫氏には副学長に就任してもらい、当面、学長には別の適任者を当ててはどうか」ということまで話し合っていたという。

文科省退職者のために尽力していた嶋貫氏への配慮が垣間見えるようだが、このような情報漏洩は、国家公務員法99条(信用失墜行為の禁止)と100条(守秘義務)に違反している。

結局、滋慶大学の申請は取り下げられたが、これは設置審査の信頼性を大きく損なうものと言えるだろう。

また、同時期には学校法人幸福の科学学園も大学の設置認可申請を行ったが、この審査過程においても、文科省や審議会の不正が明るみに出ている。

同学校法人によれば、審議委員を務める教授から、同大学の教員候補者に「こんな大学に行ったら研究者としておしまいだ」など威圧的な言動があったという。これは、守秘義務違反であると共に、「アカデミック・ハラスメント」でもあり、言語道断の行為だ。

(文科省の数々の不正行為については以下を参照)

http://university.happy-science.jp/files/2014/11/x2sol2iw.pdf

このように文科省は、日常的に違法な天下りあっせんや情報漏洩などの「不正」を行っていた。こんな状態では、高い見識と人格で後進の者を教え導くことが求められる「教育」に携わる資格はないと言ってよいだろう。

学長人事への介入に正当性はあるか

こうした情報漏洩は論外だが、そもそも大学設置申請の制度そのものに大きな問題がある。

嶋貫氏を学長候補として申請した滋慶大学と同じく、幸福の科学大学にも学長候補に是正意見がついた。

だが、審議会が学長人事に口を挟むことに正当性はあるのか。

「大学設置基準」には、「学長となることのできる者は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学運営に関し識見を有すると認められる者とする」とある。

これは審査を行う人物の主観が入る余地が多く、恣意的に運用されやすいルールだ。しかも、「大学設置基準」は、文科省の内部ルールである「省令」に過ぎず、国家で民主主義的な手続きを経て定められた「法律」ですらない。

学長人事は、その大学が何を目指しているのかという教育理念の根幹に関わるものだ。それが審議委員の「主観」で左右されるのだとすれば、学問の自由は簡単に侵害される。

幸福の科学大学の学長候補者だった九鬼一氏は、グループ法人である「幸福の科学」で幹部を、幸福の科学出版で社長をそれぞれ務め、組織経営の経験が豊富な人物。さらに、学長候補となる前は、幸福の科学学園の理事長も務め、教育事業の見識を深めていた。

一方、尚絅(しょうけい)学院大学は、元文科省生涯学習政策局長の合田隆文氏を学長として迎えている。九鬼氏のようにひとつの組織体の責任者を務めた人物に適任かどうかの意見が付き、文科省の役人、しかも大学運営とは関係のない部署を率いた人物が学長として認められることに、合理的理由があるとは思えない。

また、京都精華大学の学長はマンガ家が務めている。マンガ学部を有する同大学の教授や学部長を経験した後の就任とはいえ、マンガ家が「大学運営に関し識見を有する」のかは疑問だ。

こうした事例を見れば、学長の基準というのはきわめてあいまいだ。こうした基準の存在は、文科省の権限を不当に拡大し、国民の自由を侵害する。それが、天下りがなくならない原因でもあろう。

文科省は、補助金支給や大学、学部設置の許認可などの巨大な権力を手放し、国民に学問の自由を保障すべきだ。

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