写真は、ロシア大統領府ウェブサイトより。
ロシアの東西をつなぐ「シベリア鉄道」が全線開業してから今年で100周年を迎える。
現在、ロシアはシベリア鉄道と、第2シベリア鉄道と呼ばれるバイカル・アムール鉄道(バム鉄道)の大規模な改修を進めている。最長800メートルのレール導入やバム鉄道の複線化などで、貨物列車の最高時速を140キロ(現在は100キロ前後)に上げ、輸送能力を1.5倍程度にする構想を描いているという。このほど朝日新聞が報じた。
鉄道整備に積極的なプーチン
12月15日には、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が首相の故郷・山口県で会談する予定だ。日本の岸田文雄外務相はロシアを訪問中だが、4日には日露政府の間で、1千億円規模の基金を設立し、対ロシア投資や日本企業のロシア進出を推進することが決まった。
プーチン大統領は極東を発展させるための鉄道整備に積極的な姿勢を示しており、「アジア太平洋から荷物を集め、迅速に輸送する態勢をつくる」とも強調している(朝日新聞)。プーチン大統領は、首相だった2011年12月から、「日本までトンネルを建設することも可能。シベリア鉄道を日本の貨物で満載することにつながる」と語っていた。
こうしたロシアの鉄道計画は、日本にとっても経済発展のチャンスだといえる。
北海道とサハリンが陸路でつながり、シベリア鉄道とつながれば、日本からヨーロッパまでの輸送にかかる時間は船便より2週間短縮される。日本とロシア、欧州との間で経済的な結びつきが強まり、日本の輸出拡大も期待できる。
鉄道建設には、工事費がかかり、沿線の人口は少ないため、鉄道を通しても利用者が少ないのではないか、などといった懸念もある。しかし、北海道からヨーロッパまでが陸路でつながり、将来的には高速の新幹線やリニア新幹線が走るようになれば、日本とロシア・ヨーロッパの間で人・モノ・カネの動きが加速し、経済発展につながる。
現在、プーチン大統領が描いている鉄道計画の詳細は、11月末発売の本誌1月号記事「プーチン大統領の『世界物流革命』」に掲載している。また、同号の「北海道『収入倍増計画』 新幹線で世界とつながる」では、北海道の各都市に新幹線を通し、ロシアとも鉄道をつなぐことで、北海道が海外から見た「日本の玄関口」になり、経済波及効果が大きいことを示している。
足元を見られている日本政府
プーチン大統領は2日の岸田外相との会談に2時間近く遅刻した上、直前になって日本側の出席者を4人から3人に減らすよう要請している。これは小粒の経済協力しか持ち出さない日本政府への不快感の表れとも受け取れる。北方領土目当てで経済協力を持ち出しているのか、それとも本当にロシアと協力する気があるのかと、日本の腹積もりを問うているのかもしれない。
日本政府には、ロシアを超える大きな構想を携え、したたかなプーチン大統領との交渉に臨むことを期待したい。
(小林真由美)
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