ロシアのプーチン大統領がこのほど、安倍晋三首相との首脳会談で北方領土における共同経済活動について話し合ったことについて記者会見で言及。領土問題よりも経済協力を優先するロシア側の姿勢が鮮明になった。

これを受けて、岸信夫外務副大臣は、共同経済活動について、「(領土の帰属問題が)解決できるのであれば、協力の形としては十分あり得る」と話した(22日付東京新聞)。

積極的なロシアと消極的な日本の温度差

北方領土での共同経済活動とは、具体的には、四島で盛んな漁業や水産加工業の振興、それに道路や港湾といったインフラ整備が想定されている。これについては、両政府が1990年代から実現可能性を断続的に協議してきた経緯がある。

ロシア側は以前から、共同経済活動は日露間の信頼醸成に有効だと提案してきた。しかし日本側は、北方四島がロシア領になったと認める結果になりかねないと応じてこなかった。ロシアは自らの法律の枠内で事業を進めるべきだという立場をとっており、日本の領土にロシアの法律を適用することは認められないと主張する日本とすれ違っている。

ロシア側の積極姿勢に対し、日本側は協議した事実を正式には発表しておらず、共同経済活動について日露間の温度差が浮き彫りになった。12月に山口県で行われる首脳会談でも議題に上る可能性がある。

日露協力で中露の分断を

日本にとってロシアとの経済協力は、中国をけん制する狙いもある。アジアでは、中国が南シナ海で軍備を拡張している上に、中国の支援を受ける北朝鮮が度重なるミサイルで日本を脅している。

日本にとっては、中国・北朝鮮の背後に位置するロシアとの緊密な経済協力関係をつくり、集団防衛体制を固めることが必要だ。現時点で、国防の危機を回避することは、北方領土問題以上に喫緊の課題である。

もちろん、ロシアに交渉で主導権を握られ、経済的に搾り取られるような事態は避けなくてはならない。だが、日本の最優先事項は「中国とロシアを分断し、尖閣、沖縄などの日本の領土を守ること」という認識が大切だ。

安倍政権は、中露の分断という安全保障、ロシアとの経済協力、北方領土返還交渉という複数の議題をどのように打開していくのか、外交力が試されている。

(小林真由美)

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