中国の習近平国家主席は3日、訪中しているマレーシアのナジブ首相と会談し、マレーシアへの哨戒艇(軍艦)4隻の売却や、マレーシアの鉄道の整備に中国企業が参画することで合意した。4日付日経新聞などが報じた。
マレーシアが中国から武器を購入するのは今回が初めて。また、中国国有企業3社が請け負うマレーシアの鉄道工事の費用(約145億元=約2200億円)は、中国の金融機関が融資を検討するという。
両政府は声明で、「南シナ海の平和と安定、航行と飛行の自由を守る」と強調。中国がつくった人工島周辺に軍艦を派遣する「航行の自由」作戦を続けるアメリカに対し、「直接関係ない国の介入は問題解決の助けにならない」とけん制した。マレーシアは、中国と南シナ海の領有権で争っているが、中国は安全保障や経済協力を材料にマレーシアを取り込み、日米をけん制する狙いがあるとみられる。
アメリカから汚職を批判されているナジブ首相
中国だけでなくマレーシアも、アメリカをけん制したいとみられる。ナジブ首相は現在、自身が設立したマレーシア政府100%出資の国有投資会社「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」のアメリカでの資金流用疑惑で、米司法省から疑いの目を向けられている。
米連邦捜査局(FBI)は、ナジブ首相の義理の息子が1MDBから資金を流用し、米ニューヨークやロサンゼルスの不動産を購入したとみて調査していた。今年7月、FBIは1MDBの関係者が35億ドル(約3750億円)以上を不正流用・洗浄(マネーロンダリング)したと確定。これを受けて、米司法省は、ナジブ首相の義理の息子など親族らが保有する関連資産10億ドル(約1070億円)の差し押さえを求め、米ロサンゼルス連邦地裁に提訴したのだ。ナジブ首相が不正資金を受理したことも示唆されている。
アメリカから批判されているナジブ首相は、2日付の中国英字紙チャイナ・デイリーに寄稿し、「大国は小国の内政に口を挟むべきではない」と強調。中国との関係を深め、自身に対する批判を抑えたい思惑があるとみられる。
次々と中国に取り込まれているASEAN諸国
習氏は、フィリピン、ミャンマー、マレーシアなどのASEAN諸国のトップと次々と会い、経済協力を強化している。しかし、南シナ海を実効支配しようと目論む中国の財力頼みになってしまえば、アジアの平和が脅かされてしまう。
自由と民主主義の価値観がなければ、経済的な繁栄は長くは続かない。中国は一見、経済成長しているように見えても、実際は政府が国民の抗議活動を抑え込み、自由を奪っている。急速に成長した中国経済には、たくさんの歪みが顕在化してきている。
ASEAN諸国は、一時的な繁栄を求めて中国にすり寄るのではなく、日米とともに中国包囲網をつくり、中国に「自由の価値」を伝え、啓蒙していくことが必要だ。
(小林真由美)
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