ハンガリーで2日、欧州連合(EU)の加盟国で難民を分担して引き受けるというEUの政策についての是非を問う国民投票が行われた。
国民投票は、「EUがハンガリー議会の承認なしに、非ハンガリー国民の義務的な受け入れを指示できることを望むか」という質問への是非を問う内容で、反対票は98%に達した。しかし、有効投票率は40%にとどまり、国民投票が成立する条件となる50%を下回ったため、投票は不成立となった。
国民の関心が高いテーマなのに投票率が低い理由には、「難民受け入れに賛成ではないが、人道的に断ることもできない」という国民の迷いがあったと考えられる。
「反難民」の姿勢で知られるオルバン首相は、この結果を受け、「ブリュッセル(EU)は意向をハンガリーに押し付けることはできない」と強調した(AFP通信)。「難民受け入れ拒否」の民意をEUに突き付け、難民分担計画の再考や、欧州への難民流入抑制策の強化を求めるとみられている。
EUの政策に高まる加盟国の不満
「自国の難民受け入れに関する政策を自国で決められない」という現行のEUの制度には問題がある。
実際にイギリスは6月、主権国家としての立場を守るためにEU離脱という決断をした。ドイツでも、難民受け入れに寛容なメルケル首相率いる与党「キリスト教民主同盟(CDU)」が、難民受け入れに反対する新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に選挙で敗れるという結果が出ている。
EUが、加盟国の民意に反する政策を押し付けているとして、EUに対する不満は高まっている。各国の事情を考慮せずに、欧州委員会が政策を各国に押し付ける体制は、国の「主権」を否定しており、全体主義につながっていく恐れもある。このままでは近い将来、「大きな政府」であるEUが崩壊する可能性も高いといえるだろう。
「なぜ難民が生まれるのか」を考える
難民問題は、元を絶たなければ、いつまでたっても解決しないだろう。
大川隆法・幸福の科学総裁は今年2月、ドイツ観念論の祖である哲学者・カントの霊言を収録した。カントの霊はヨーロッパへの難民問題に関して、こう語った。
「 西洋的な価値観で行く自由、『自由』『平等』『博愛』『資本主義的精神』的なものを共有できない諸国家が、次の政治体制を求めて、いったいどう国をつくったらいいかが分からないがために、戦乱が起きたり、いろいろ反乱が起きたりして、迫害されそうな人たちが次々と逃げ出しているという状況ですね。だから、『国の姿として、どうあるべきか』という枠組みをつくらなければいけないのだろうと思うんです 」
EU諸国が「大きな政府」となって難民を各国に割り当てる方法では、難民排斥運動に発展するなどして新たな憎しみを生む可能性もある。全体主義的な方法ではなく、各国の意思や民意を反映した難民政策を模索することが必要だ。
むしろEU諸国は、諸外国と協力の上、難民を生み出している国の紛争や戦乱を安定させ、繁栄に導くための「未来ビジョン」を描くべきではないだろうか。
(小林真由美)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『公開霊言 カントなら現代の難問にどんな答えをだすのか?』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1635
幸福の科学出版 『正義の法』特別ページ
http://www.irhpress.co.jp/special/the-laws-of-justice/
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