韓国の国会(Sean Pavone / Shutterstock.com)。
岸田文雄外相は9月30日の記者会見で、韓国の元慰安婦を支援する財団が、安倍晋三首相に対して「おわびの手紙」を出してほしいとの要請があることについて、「(日韓)合意は昨年12月に発表した以上でも、以下でもない。その追加的な措置は一切合意されていない」と述べ、不快感を示した。
これに先立ち、韓国の趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)報道官は、29日の定例記者会見で、「韓国政府としても、日本側が慰安婦被害者の方々の心の傷を癒すそうした追加的な措置をとるよう期待している」と発言していた。
読売新聞(20日付電子版)によると、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」は、日韓合意に基づいて、日本政府が先月に財団側に振り込んだ10億円を、元慰安婦の生存者らに支給する方針だ。しかし、一部の元慰安婦などが、合意内容に反対しているため、財団は、安倍首相からの手紙を得ることで、反対の声を和らげようとしている。手紙の要請は、韓国政府を通じて行われたという。
日本としては、合意にはないおわびを要求する韓国の意図が読み取れないだろう。しかも、韓国政府からの正式な要請となれば、ますます理解が及ばない。だが、韓国内の政局を見れば、そこには「ある思惑」があることが分かる。
日韓合意の「賠償的性格」を強める狙い
朝鮮日報(27日付電子版)によれば、韓国外交部に対する国会の国政監査が26日に行われ、日本政府が拠出した10億円の性格に関する説明がなされた。
この中で、外交部の尹炳世(ユン・ビョンセ)長官は、「(日本)政府として責任を痛感して、内閣総理大臣として安倍首相が謝罪および反省のもと、それを履行するために政府予算から10億円を拠出したものであり、三つを合わせれば国際社会はどのような含意があるのか誰でも分かる」と述べたという。
つまり韓国では、「日本政府は『慰安婦は性奴隷』であったと認め、それに対する償いを行っていると、国際社会は当然のように考える」と見ている。その見方を確実に定着させるために、安倍首相のおわびの手紙を引き出そうとしているわけだ。
合意以前より、今回のような動きは予想され、懸念されていたにもかかわらず、安倍政権は、そうした声を振り切って合意に踏み切った。食い違った意図で捉えられつつある韓国側の姿勢について、説明責任を果たすべきだ。もちろん、手紙を出すべきでないことは、言うまでもない。
(山本慧)
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