「慰安婦の声」の申請資料。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、ホームページ上に「世界の記憶」(旧名・世界記憶遺産)に申請された資料の概要を公開した。この中には、韓国などの民間団体が5月までに申請した慰安婦資料(正式名称「慰安婦の声」)も含まれている。今後、どのような内容であるのか注目が集まりそうだ。
申請資料の冒頭には、「『慰安婦』とは1931年から45年の間に、日本軍の性奴隷にさせられた女性と少女を指す婉曲的な用語」と記述。その上で、同資料の世界史的な意義について、「断片資料の段階的な蓄積で認識が広まった慰安婦制度は、被害者数ではなく、犠牲者の苦しみや永久的な屈辱の深さという点で、(ナチスの)ホロコーストやカンボジアの大虐殺に匹敵する戦時の惨劇である」と、偏った説明が記されている。
数々の研究が進む日本では、慰安婦問題で政府を批判したとしても、ホロコーストと同列視する人はごくわずかだ。世界的に有名な大虐殺と結びつけようとするこの申請には、日本が悪事を犯したというレッテルを貼ろうという、「政治的な意図」が透けて見える。
申請の8割が戦後資料!?
気になる資料の中身はこうだ。資料は、慰安婦に関する公的・私的文書563点、元慰安婦女性238人の証言などの記録1449点、慰安婦問題の解決を求める団体の活動資料732点の3種類からなる。
つまり、全資料2744点のうち、約半数が証言などの記録に依拠し、そこに団体の資料を含めると、「戦後資料」は全体の8割に達する可能性がある。慰安婦問題については、「戦後に作られた虚構の歴史」という批判があったが、今回の申請は、それを逆に裏付ける形となったわけだ。
すでに高橋史朗・明星大学特別教授が、今回の申請について「疑問だらけ。客観的に検証されていない口述記録や活動資料が記憶遺産にふさわしいのか」と批判的な見方を示している(19日付産経新聞)。
戦後に作られた資料にどれほどの世界的希少性があるのか疑問だが、とにかく資料の多さという“数の暴力"で、登録をゴリ押しするつもりだろう。日本政府は、ただちに申請資料を精査して広く公開するともに、反論に出なければならない。
歴史版「失われた30年」をつくった自民
とはいえ、保守とされる自民党政権は、過去の「歴史戦」を見れば明らかなように、惨敗続きで、あまり期待できそうにもない(下表)。
(本誌2016年7月号より)
バブル崩壊以降の経済停滞を「失われた20年」と呼ぶが、歴史戦においても、自民党は「失われた30年」をつくった元凶と言える。自虐史観の根源である「村山談話」についても、自民党の大臣が談話の発出に反対すれば、違う結果を生んでいたかもしれない。
今の日本には、戦後71年でたまりにたまった自虐史観という膿を出し切る新しい保守政党の誕生が待たれる。
(山本慧)
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