中国共産党による、宗教弾圧が強まっている。

米ニューヨークタイムズ紙が一面で、迫害に怯える中国人ユダヤ教徒のインタビュー記事を掲載した(27日付)。

ユダヤの印や石碑が撤去される

中国の開封という地域には、約千年前に渡って来たとされるユダヤ教徒のコミュニティーが存在する。

ここでは、「失われつつある開封ユダヤの文化を復興しよう」と、様々な試みが行われてきた。中国政府も数年前までは、ユダヤ教の興隆を観光や投資につながるものだと考え、その活動に対して寛容な姿勢を示していた。

しかし、近年、中国では信仰復活の動きに対する当局の監視は厳しくなり、どのような小さな団体であっても、スピリチュアルなものであれば政府の監視下に置かれる状況となっている。

ユダヤ教においても、信徒の存在を表す印や、古い集会所の場所を示す石碑が撤去された。現地のユダヤ教徒の男性は、ニューヨークタイムズ紙の取材に対し、政府の監視を恐れながらも以下のように述べている。

「これら(信徒の証が消されたこと)が意味するのは、ここにはユダヤ教徒はいないということだ」「我々はただユダヤ教徒でいたいだけ」

現在も、家における少人数での集い、祈りなどは許されている。逮捕者も出てはいない。しかし、現地のユダヤ教徒は、警察や国家警備員が彼らを監視していると言う。

キリスト教・イスラム教の弾圧

中国では、仏教、道教、イスラム教、カトリック、プロテスタントの5大宗教には、共産党が定めた「正常な」活動を行う自由が認められている。しかし、ユダヤ教は、この5大宗教に含まれていない。今後が危ぶまれる立場なのだ。

また、5大宗教であっても、政府が「正常である」と認めない活動は弾圧されることもある。中国が認めているとされるキリスト教への弾圧が問題になっている。

中国最大のプロテスタント教会の牧師・顧約瑟(グ・ユエセ)氏が、2月から消息不明となっている。顧氏は、悲惨な環境と拷問さえ行われる場所として有名な、秘密の「黒い刑務所」に捉えられていると言われている(2月5日付ザ・ウォールストリート・ジャーナル)。

また、中国のキリスト教では、政府によって教会を破壊されたり、十字架を引き下ろされたりなど、信教の自由が認められているとは到底言えない状態にある。

これ以外にも中国政府は、新疆ウイグル自治区に住む1000万人のイスラム教徒に対して、公然と迫害を行っている。教師や公務員は一切の宗教活動を許されず、未成年は宗教活動はおろか、宗教教育を受ける自由さえない。

ウイグル人の大学生は、宗教行事である「ラマダン」への参加も禁止され、配られた飲食物を摂取するよう強要された。

日本では語られない「宗教」

日本では、このような宗教弾圧についてあまり報じられない。

ラマダンの期間に飲食を強要されることが本人たちにとってどれほど苦痛であるかも、日本人には、なかなか想像がつかないだろう。

しかし、世界の人口の8割以上が何かしらの信仰を持っている。それ故に、宗教弾圧は世界のメディアにおいて重要な問題として扱われる。ユダヤ教弾圧の件がニューヨークタイムズの一面に取り上げられるのも、ユダヤ教徒が多く住むアメリカにとっては他人事ではないからだろう。

日本人も、いつまでも「他人事」として傍観しているわけにはいかない。(片)

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