中国共産党による国内の宗教活動への取り締まりが、自由な宗教活動が認められている香港にも拡大している。

26日付の米ニューヨークタイムズ(NYT)紙が次のように報じた。

香港の牧師のフィリップ・ウー氏が、中国本土のキリスト教徒を香港に招き、宗教セミナーを開催した。すると、広東省深セン市当局宗教課から出頭を命じる電話を受けた。ウー氏が中国本土のキリスト教徒向けにウェブサイトで宗教セミナーの告知をしたことが、「中国本土の法律に違反した」と告げられたのだ。

記事によると、ウー氏は「香港特別行政府の法律」には違反していないため、中国本土からの出頭要請に驚いたものの、深セン市当局宗教課を訪れ、職員と面会した。その時、中国の法律に違反したことを認める文書に署名をさせられたという。

中国は世界最多のキリスト教人口国家になる

キリスト教は、今や中国国内で約7000万人の信者を持つ最大の宗教勢力となっている。2030年までには2億4700万人に拡大するという予測もあり、そうなれば、アメリカを抜いて世界最多のキリスト教人口を抱える国になる。今回の件のように、中国本土からは、毎年何万人ものキリスト教徒がより自由な宗教活動を求めて香港を訪れている。

共産党指導部は、キリスト教の伝道を通して西欧諸国の考え方が宗教として中国に入り、共産党への批判につながることを危惧している。確かに、昨年9月に始まった香港の雨傘革命も、キリスト教徒のリーダーたちが運動をけん引していた。約7000万人もの国内のキリスト教徒が、外国の支援を受けて一斉蜂起すれば、共産党も無視できない勢力となるはずだ。

中国当局は5月以降、キリスト教の活動が盛んな浙江省において非公認教会(地下教会)の弾圧を本格化させ、既に数千もの教会の十字架が撤去・破壊されるなどの被害を受けていることも明らかになっている。

信教の自由を奪う政策は国内外の批判を集める

中国当局が宗教活動を取り締まる背景には、儒教の「易姓革命」の思想がある。これは、徳を失った王朝に天が見切りをつけたとき、宗教をきっかけに革命が起き、王朝が変わるというものだ。実際に中国では、清朝末期に「滅満興漢」のスローガンを唱えた「太平天国の乱」など、宗教活動が政治活動に転化して国を動かしたことが歴史上何度も起きていた。

中国は今、上海株の暴落や、深刻な環境汚染、天津での大規模な爆発事故など、さまざまな国難に見舞われている。人間の尊厳にかかわる「信教の自由」をも奪おうとする当局に、民衆の不満はさらに高まり、宗教をきっかけとした革命が中国本土で起きる日も、そう遠くないかもしれない。(真)

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