福岡高裁那覇支部は16日、翁長雄志・沖縄県知事が、基地が移設される予定の辺野古沿岸部の埋め立てへの承認を取り消した行為を、「違法」だとする判決を出した。

2013年に仲井真弘多・前知事が埋め立てを承認していたにもかかわらず、翁長氏は知事に就任後、2015年10月に承認を取り消した。

政府はこれを、「アメリカからの信頼を失いかねない国益を損なう行為」とし、翁長氏に承認取り消しを撤回するよう再三求めた。しかし、同氏は応じなかった。結局、争いは法廷に持ち込まれた。

大手6紙はこの問題を1面で大きく取り上げ、さらに複数面に渡って詳細に報じている。ここで、各紙の論調を比較してみたい。

産経は翁長氏の主張の矛盾を報道

保守色の強い産経新聞は、翁長氏の言動の矛盾を強調する論調だ。翁長氏は、県内にある米海兵隊の倉庫群や訓練所などの工事や移設計画には、推進の立場を取っている。同紙は、辺野古移設だけに反対を続ける翁長氏の一貫性のなさを指摘した。

読売・日経は中立を意識

読売新聞と日経新聞の2紙は、賛成派・反対派両方の県民の意見を載せ、中立的だ。ただ、読売新聞は「翁長知事の違法が認定された」とする社説を載せるなど、移設に賛成寄りでもある。

朝日・毎日・東京は翁長知事目線

これに対して朝日新聞は、翁長知事が判決後の会見で語った「判決を受け入れがたい」とする姿勢についてフォーカスして報じている。判決が法律論のみならず、移設計画の妥当性にまで踏み込んだことを挙げ、政府や判決の妥当性を疑問視する、沖縄大学長や山梨学院大の教授の声も載せている。

毎日新聞も、「『民意は揺るがぬ』県敗訴 反対派、闘い継続」と見出しを打ち、あたかも沖縄県民全体が移設に反対しているかのような報じ方をした。

東京新聞は、さらに強い政府への批判を展開している。1面に「県民切り捨て国策追認 協議も軽視」と見出しを掲載。全体的に、政府が沖縄県民の心情に全く配慮せず、地方自治体の意見にも耳を貸さなかったという論じ方だ。

沖縄二紙も司法を批判

沖縄の地元2紙の報じ方も興味深い。

琉球新報は、「司法、政府に従属」「地方自治程遠く」と見出しをつけ、政府のやり方を「法より軍事優先」と批判している。

沖縄タイムスも、「きしむ司法の信頼」という見出しで、沖縄では政府と国会、司法の三権は分立していないと指摘。

どちらも10面ほど紙面を割き、大々的に報じている。

正しく判断をするために

大手6紙に加えて、沖縄の2紙、計8紙を比較したが、同一の事案であっても、媒体によって、取り上げる情報が大きく異なることが分かる。

ただ、移設賛成派の声を取り上げず、あたかも県民全体が移設反対であるかのように報じるのは問題であろう。これこそ、国民の「知る権利」を阻害していると言える。

メディアの「報道する自由」が主張されることが多いが、メディアが「報道しない権利」を乱用していることも看過できない。

情報を受ける側として、発信元の特性を理解し、「何を報道して、何を報道していないのか」「情報のどの部分にクローズアップしているのか」を考える必要がある。(片)

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