北朝鮮は9日、朝鮮中央テレビで「核弾頭の威力判定のための核爆発実験に成功した」と発表した。「小型化、軽量化された、より強い打撃力の核弾頭を、必要なだけ生産することができるようになった」と実験の成果を強調している。
これが本当であれば、日本は極めて危険な状況を迎えたことになる。
北朝鮮の核実験は今回で5回目となるが、今年に入ってすでに2回目。これまで3年周期で行ってきた実験を、今年はわずか8カ月後に行った。極めて早いスピードで開発を進めていることがうかがえる。
北朝鮮の狙いは、最強国アメリカに「核保有国」であることを認めさせ、交渉のテーブルにつかせて平和条約を結ぶなどして、金正恩体制の維持を保証させること、と言われている。
核ミサイルを撃てる潜水艦は、なぜ恐いのか
北朝鮮は8月下旬、潜水艦から発射する弾道ミサイル(SLBM)の発射実験にも成功していた。その際に、SLBMは約500キロ飛行し、日本の防空識別圏の約80キロ内側の海上に落下した。北朝鮮の「SLBM」に続く、「核弾頭」の実験成功は、日本にとってどう危険なのか。
「北朝鮮が核弾頭搭載のミサイルを撃っても、日本は弾道ミサイル防衛システムがあるから大丈夫」という意見もある。実際に、日本のミサイル防衛は、まず海上のイージス艦がミサイルを発射して迎撃し、もし失敗しても、地上から撃ち落とすという二段構えになっている。
しかし、日本のミサイル防衛システムがいくら優秀であっても、ミサイルが「潜水艦」から発射された場合は、陸上と違い、事前に探知することが難しくなる。
そもそもSLBMは、核攻撃を仕掛けてきた相手国に対し、確実に核で「報復」できるようにするための兵器だ。
例えば、A国がB国から核による攻撃を受け、A国の本土が壊滅的な被害を受けても、海の中の潜水艦は核を持ったまま生き残るため、A国はB国に核の報復攻撃ができる。つまり、北朝鮮が核を搭載したSLBMを持つことになれば、潜水艦からの核報復攻撃を恐れて、どの国も手を出せなくなる。
「報復」どころか、「先制攻撃」を仕掛けてくる危険性も
もっとも北朝鮮の場合は「報復」どころか、近海から周辺国に対して「先制攻撃」を仕掛けてくる可能性もある。核で報復できない日本は、格好の標的だろう。日本を人質として、同盟国のアメリカを脅す材料にも使える。
北朝鮮から潜水艦が出港して日本海から発射すれば、韓国はもちろん、日本のほぼ全土が射程内に入る。その場合、潜水艦の性能が重要になってくるが、北朝鮮は現在、SLBMを発射できる2000トン級の潜水艦を1隻保有している。現在、3発程度のSLBMを発射できる3000トン級の潜水艦を建造中とみられており、いつ完成するのかが注目されている。
抑止力としての核装備が必要な時期
北朝鮮は、SLBMのみならず、さまざまな弾道ミサイルを開発し、核武装の道をまい進している。その行動は、「挑発」などという生易しいものではない。
日本の防衛省は、迎撃能力の向上に向けて、次世代型のミサイル迎撃システムSM3の取得費用とPAC3の改修費用を来年度予算案に盛り込むことを決めた。
しかし、大量のミサイルを撃ち込まれた場合、対応できない危険性も高い。やはり、核には核で対応するしかない。最大の抑止力になる「核装備の検討」が必要だ。
これまで、国連などが北朝鮮に対する経済制裁などを繰り返してきたが、ほとんど効果がないことは、今の北朝鮮の"元気な姿"を見れば分かる。最大の問題は、水面下での支援をやめない中国だ。中国は、北朝鮮に制裁するどころか、大量の石油を供給し、北朝鮮から鉄鉱石や石炭を輸入するなど、"支援"を惜しまない(参考:8月14日付読売新聞朝刊)。
日本が核装備の検討に入ることは、北朝鮮のみならず、中国をけん制することになる。日本はアメリカを「世界の警察官」に復帰させる外交努力と並行して、自分の国は自分で守る体制をつくらなければならない。
(小林真由美)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『北朝鮮・金正恩はなぜ「水爆実験」をしたのか』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1612
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