自民党税調会の宮沢洋一会長が、一部主要紙のインタビューに応え、2017年度税制改正で専業主婦世帯の税負担を軽くする「配偶者控除」の見直しを検討すると表明した。

配偶者控除とは、妻の年収が103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円を差し引けるもの。主として専業主婦世帯の所得税を軽くする目的で設けられている。

配偶者控除を受けるために年収を103万円以下に抑える女性が多く、共働きが増えるなか、制度が時代に合っていないと政府は説明する。

女性の活躍は社会で働くことだけではない

控除の廃止は、事実上の「増税」を意味する。そのため、配偶者控除廃止の代わりに、夫婦であれば一定の控除が受けられる「夫婦控除」を設ける案が浮上している。

だが、現在、配偶者控除の適用を受けている世帯の一部には増税となる。

政府は、専業主婦でパート収入を得ている女性に有利に働く「配偶者控除」が、女性の社会進出の足かせとなっているとする。

だが、ここには「女性の活躍」とは「社会で働くこと」だとする考え方の押し付けがある。「女性の活躍=社会で働くこと」という図式が出来上がってしまえば、逆に女性の生き方の多様性が失われてしまいかねない。

株式会社サイバーエージェントが2014年9月に実施した、「専業主婦」に関するアンケート調査(約830人が回答)では、「専業主婦になりたいですか」という問いに対して51%がYESと回答している。

このように、必ずしもすべての女性が「社会で働きたい」と思っているとは限らない。「家庭で家族を支えること」に喜びを見出す女性もいれば、「社会で大きな仕事をすること」に生きがいを感じる女性もいるだろう。

夫を支え、家庭を切り盛りすることも、社会に出て仕事をすることも、どちらも素晴らしい女性の「活躍」であることに変わりはない。

社会保障費の増大につながらないか

さらにいえば、現在のような政府丸抱えの社会保障制度を維持したまま、女性がみな社会で働くようになれば、子育てや介護のコストが増大するだろう。

目先のことを考えれば、「女性を労働力として使えば税収が増える」と考えてしまうかもしれない。しかし、社会で働く女性が増えれば、ますます子育てや介護を政府に頼るようになり、結果として税収や社会保険料収入よりも社会保障費が増大し、財政破綻につながる可能性も考慮しなければならない。

税制を変えることで女性の生き方を誘導していくことは、正しい道とはいえない。

今必要なことは、個人が自由に使えるお金を増やし、多様な選択肢を提示することである。(片)

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