イギリスのEU離脱をめぐって、各国の要人らがさまざまな反応をしている。その発言をまとめてみると、各国の置かれている状況が垣間見える。
イギリス・キャメロン首相
「国民は明確に違う道を選んだ。この方針に向かう新しい指導者が必要だ」
→残留派を率いたキャメロン首相は、国民投票の結果について、こう述べ、辞任を表明した。次の首相は、EUとの新たな関係をどう構築していくか。
イギリス・離脱派のリーダー・前ロンドン市長・ジョンソン下院議員
「イギリスはヨーロッパの一員。ヨーロッパに背を向けることはできない。これまでと同様に、他国の人たちと緊密な交流を続けていく」
→次期首相の有力候補と目されるジョンソン氏。本人は否定しているが、残留派に配慮する姿勢を見せるなど、支持を広げるような動きも見せている。
イギリス・スコットランド民族党・スタージョン党首
「スコットランドがEUに残留するため、あらゆる手段を尽くす」
→イギリス北部のスコットランドでは、すべての選挙区で残留支持のポイントが高かった。イギリスのEU離脱を機に、2014年9月以来、独立を問う住民投票を再び実施する構えだ。
フランス・オランド大統領
「痛みを伴う選択で、イギリスやヨーロッパにとっても残念」「ヨーロッパは厳しい試練に直面している。極右、極左、ポピュリズムが勢いづく恐れが増大している」
→この発言の背景には、フランスが移民国家であること、昨年11月にパリで起きた、イスラム教徒による同時多発テロなどがある。国内でEU離脱を目指す極右政党が国民投票を呼び掛けるなど、隣国イギリスのEU離脱の影響は、フランスにも波及しつつある。
ドイツ・メルケル首相
「イギリス国民の決断を非常に残念に思う。ヨーロッパの統一プロセスにとって分断の日になってしまった」
→ドイツはEUに対して、最も拠出金を出している。しかし財政事情は苦しく、同じく巨額の拠出金を出しているイギリスが離脱すれば、負担はますます増える可能性がある。
アメリカ・オバマ大統領
「投票結果は、グローバル化によってもたらされている変化や諸問題を戒めるもの」「アメリカとイギリスの特別な関係はこれからも続く」
→アメリカにとって重要な同盟国であるイギリス。同国のEU離脱は、積み重なる財政赤字などの経済問題を抱えるアメリカに、どう影響を与えるか。
米共和党の大統領候補・ドナルド・トランプ氏
「イギリスはEUから独立し、政治や国境、経済を取り戻した」
→イギリスの法律の半分以上がEUによって決められており、トランプ氏の発言にはうなずける部分がある。ただ、同氏が「アメリカ第一主義」を掲げてTPP離脱を表明しているが、これとイギリスの状況はだいぶ違う。
ロシア・プーチン大統領
「イギリスやヨーロッパだけでなく、我々を含め、グローバルな影響を与えるのは避けられない。プラスとマイナスのどちらの影響が多いかは今後分かる」
→イギリスのEU離脱は、EUの結束力を弱め、ロシアへの制裁緩和につながるという指摘もある中、プーチン氏は慎重な立場を崩していないようだ。
イギリスは今後、欧州理事会に脱退通知を行い、早ければ2018年にEUを正式に離脱する。
ただ、国内では、残留派が示していたイギリスのEUへの拠出金額が、実際は少なかったとして、離脱に投票したことを後悔している国民も増えているという。議会に寄せられた、国民投票のやり直しを求める署名も約400万人に達していると報じられている。EU離脱をめぐって、国が分断している状態だ。
そうした中、考えたいのは、他の国に依存しすぎるのではなく、自分の足で立つという国家像。離脱・残留にかかわらず、こうした国家像を目指さなければ、その国に明るい未来はない。ギリシャのように、外国のお金を当てにし、大量の公務員への手厚い保証や年金などに使っていては、いつか財政破綻してしまう。
イギリスのサッチャー元首相が繰り返し訴えた、自助努力の精神が国の繁栄の基礎となる。この精神が今ほど必要な時はない。
(冨野勝寛)
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