米ワシントンポスト紙および米紙各紙が、レバノンでイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが推す実業家で元首相のナジブ・ミカティ氏を首相候補に指名した件を伝えている。

これに反発する親欧米派のハリリ暫定首相支持派は、前日に続いて国内各地で抗議デモを展開、一部暴徒化して、治安部隊と衝突している。ミカティ氏は、自分はヒズボラではないとし、ヒズボラの指導者もミカティ氏が率いる内閣は「あらゆる政治勢力が参加する救国政府」になると強調した。

ヒズボラは1980年代、イスラエルの南レバノン侵攻時に結成されたレジスタンス・グループで、アラビア語で「神の党」を意味する。米国はヒズボラをテロ組織に認定している。クリントン米国務長官は状況を注視してそれによって判断したいとしながらも、“A Hezbollah-controlled government would clearly have an impact on our bilateral relationship with Lebanon”(米国とレバノンとの2国間関係に明らかに影響を及ぼす)と牽制した。米国は、親米欧政権の維持のために、この5年間でレバノンに対して12億ドルの経済的・軍事的支援をしてきた。今年も2億ドル以上を計上している。イスラエルにとって、レバノンで活動するヒズボラは重大な脅威であるし、これを殲滅することはイスラエル軍の悲願だ。

アメリカやイスラエルは、シリア、イラン、ヒズボラがミサイル技術、ミサイルの移転に協力しあっていると見ている。また次のイスラエルとヒズボラの戦争は2006年の規模をはるかに上回る可能性がある。そんな中での、ヒズボラ推薦者の首相の組閣である。オバマ政権の中東政策における挫折だと見る声もある(Andrew Tabler, Washington Institute for Near East Policy)。

中東の今後の行方が注視されるところだ。(HC)

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