安倍晋三首相は、22日に行った衆参両院本会議の施政方針演説で、憲法改正について触れ、「国民から負託を受けた私たち国会議員は、正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく」と演説した。

憲法改正とは「緊急事態条項」

安倍首相が訴えるのは、「緊急事態条項」を追加するための憲法改正である。

緊急事態条項とは、テロや災害、戦争などの緊急事態に、内閣・政府主導で迅速に非常措置を行えるようにする権限である。例えば、選挙と災害が重なった場合、国会に議員の「空白」が生じるため、緊急事態条項を発動して議員の任期延長を認めれば、非常事態に対応できる体制を整えられる。

これに対し、民主党の岡田克也氏は「立憲主義を理解しない首相のもとで憲法改正を議論すると、憲法そのものの破壊になる」と批判している。

憲法9条の改正は?

「憲法改正について正々堂々と議論する」と演説する安倍首相であるが、果たして本当にそうなのか。

というのも、安倍首相は、2015年2月の参院予算委員会で、憲法改正についてこう言及している。

「自民党は既に9条の改正案を示している。なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」

安倍首相の悲願は、緊急事態条項ではなく、憲法9条改正ではないか。緊急事態条項を全面に出すのは、本来の趣旨を隠して、国民の支持を得ようとする姑息な手段と言えるだろう。

日本国憲法自体が「憲法違反」

憲法9条改正は、国民主権を守る上でも成し遂げなければならない。

護憲派の憲法学者は、憲法に基づいて国の政治を動かす「立憲主義」を、あたかも"憲法至上主義"のように理解している。だが憲法は、「人権や統治の原理」を定めるものであって、国民主権まで拘束できるものではない。

国民主権を脅かすのではあれば、憲法は変えてもいい。それは、立憲主義に反するものではない。憲法を護って国が滅んでしまっては、本末転倒だ。

正々堂々と憲法9条改正の議論を

現在、日本を取り巻く国際情勢は、中国の海洋進出や北朝鮮の核実験などで混迷を極めている。そうした中で、憲法9条改正の必要性は増すばかり。

安倍首相は、緊急事態条項の加憲で誤魔化すのではなく、正々堂々と憲法9条改正の議論をすべきだ。

(HS政経塾 水野善丈)

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