中国経済の先行きが見えない――。

中国証券当局は8日、株価が短期間で極端に乱高下した際に、"投資家たちの頭を冷やす"目的で売買を停止する「サーキットブレーカー制度」を、適用初日からわずか4日後に撤回した。機関投資家が「売りたくても売れなくなる」ことを恐れ、かえってパニック売りを招いたためだ。

当局は国有企業株を中心に買い支えることで介入したが、場当たり的で一貫性のない政策運営に、中国市場への不信感は高まる一方だ。

海外で取引される人民元の下落が加速

中国政府は、中国本土の上海外国為替市場を厳しい管理下に置いている。一方で、国内金融市場の対外開放、人民元の国際化戦略を進めており、香港やロンドンの海外市場でも人民元が売買されている。

だが、中国政府の規制が及ばない海外市場での人民元の自由な売買が、上海市場の為替レートに影響を及ぼし、元安傾向を後押ししているという(参考:1月8日付日経新聞朝刊)。

それに加え、米連邦準備理事会(FRB)が2015年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切り、人民元よりもドルを持っている方が有利に運用できるとの観測から、人民元の下落が加速した。それが上海市場にも影響を与え、元安に拍車がかかっている。急激な元安が海外への資本流出を招き、中国経済を一段と押し下げるという懸念が広がっている。

次々と裏目に出る、場当たり的な対策

思い返せば、2015年夏の上海株式市場での株価急降下以来、当局の対策は後手に回るものばかりだった。当局が打つ株価安定策は次々と裏目に出て、かえって株価が不安定になっている。

習近平指導部の強権で国内の人民元の動きはコントロールできたとしても、海外への金融市場の開放を進める中で、徐々に政権の手に負えなくなっている。

中国は一党独裁の恐怖政治で、国民の信教、言論・出版などさまざまな自由を奪い、対外的にも強硬路線を取っている。だが、海外との結びつきを強めれば強めるほど、経済面で独裁を維持することは、今後、ますます難しくなるだろう。

経済が低迷する今、習近平・国家主席には、本質的な問題解決のために何をすることが正しいのか、について良く考えていただきたい。

(小林真由美)

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