中国人民銀行(中央銀行)は13日、人民元・米ドルの為替レートの基準値を3日連続で切り下げた(注)。人民元切り下げにより、約4.5%の元安ドル高が進んだ。元安誘導で輸出拡大を支えようとする政策に、海外からの不信感は強まっている。

切り下げは「金融自由化」か?

中国の株式市場は現在、「管理変動相場制」を採用しており、人民元・米ドルの為替レートの取引目安として、人民銀は日ごとの「基準値」を提示していた。その基準値に近い値でしか為替は変動できない。

今月10日までは、基準値は市場の終値を反映していなかった。例えば、基準値に比べて為替が下がっても、翌日の基準値は下がらないということ。市場実勢とかけ離れた状態が続いていたとも言われる。それが11日以降、前日の終値を反映して基準値を設定する方式に変更された。この方式に基づいて人民元が切り下げられた結果、元安が進行。人民銀はこの方式変更を「金融自由化の一環」と主張している。

本質は「市場への介入」

しかし、今回の切り下げを「金融自由化」として評価するのは早計だ。自国の思惑に合わせて為替をコントロールしようする姿勢は消えていないからだ。

今回の基準値引き下げの動機は、人民元安による輸出支援で減速する景気を後押しすることが目的の一つであると、誰もが考えている。人民銀は最近、人民元の国際化を目指して、人民元を無理に高めに保ってきたとも言われる。その人民元高に国内経済が耐えられず、切り下げたのだろう。

つまり、結果的に人民元が切り下がるからこそ、為替の基準値設定方式を変えたのであって、「自由化」が本当の目的ではない。 “適正”な人民元安に誘導したいなら、「管理された為替相場」を手放せばいいだけの話だ。

ましてや最近、中国は株価下落を防ぐべく、あからさまな市場介入をしていることも話題になっている。そうした国の「金融自由化」という言葉を信じることはできない。

変動相場制に移行しなければ人民元は国際化できない

「為替レートの基準値が市場実勢に近づくこと」と、「金融自由化」は異なる。金融自由化と言うなら、変動相場制に移行し、株式市場への介入もやめるべきだ。そうしなければ今後も恣意的な介入は続くと見なされ、世界各地の取引で使われるようにはならない。人民元の国際化には程遠い状況だろう。(泉)

(注:通貨切り下げとは、固定相場制を採用する国が、自国の通貨の価値が下がるように為替レートを変更すること)

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