政府は免税で外国人の消費を取り込む方針だ。

政府が「観光立国実現」のための施策に力を入れている。

政府は19日、訪日外国人が日本で買い物をする際に消費税を免税する制度を、来年度から拡充する方針を固めた。制度が拡充されれば、家電製品や洋服、宝飾品などの免税対象品の販売合計額が、1店舗につき1日当たり「1万円超」から「5千円以上」に引き下げられる。20日付産経新聞が報じた。

過去最高の訪日外国人数を記録

この方針の狙いは、地方の免税店の活性化、訪日外国人の消費の取り込みにある。

日本政府観光局によると、今年1~10月の訪日外国人旅行者数は、通年でも過去最高の1631万6900人。これは実に前年の1.5倍に当たる。訪日外国人数を「20年に2000万人」まで増やすことを成長戦略の一環に掲げる安倍政権としても、喜ばしい成果だろう。

日本経済を活性化する上で、「訪日外国人に日本でお金をたくさん使ってもらう」という視点は重要である。

GDPは2期連続のマイナス成長

しかし、その前に、何かやるべきことを忘れていないだろうか。

日本人に対する"免税"だ。

このほど発表された、7~9月の国際総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長。2014年に消費税率が8%に上がったが、景気回復の兆しはなかなか見えてこない。それどころか、2017年に10%に増税する準備を着々と進めている。

「ひき肉」は良くても「合いびき肉」はダメ!?

その中で、政府与党が進める軽減税率の議論も平行線をたどっている。

軽減税率は消費増税10%と同時に導入予定で、生活必需品の税率を低く抑えることが目的だ。今議論となっているのは、その対象品目だ。

公明党は、消費税引き上げによる負担感を緩和させるために幅広い品目を対象にするように求めている。一方で、自民党は対象品目を絞り込むよう主張している。

だが、そもそも、対象品目を分けるという発想自体に無理がある。

例えば、現在出ている案の中では、牛ひき肉やカットレタスは生鮮食品で対象品目だが、合いびき肉やミックスサラダは加工食品として対象品目から外す、などというものがある。これでは線引きの基準が分かりにくい。また、何が生活必需品でぜいたく品かも人によって違うもので、国が決められるものではないだろう。

登録や払い戻し手続きで国民の負担は増える

軽減税率を導入する上で、国民の負担も増える。

対象品目の登録やデータ管理、2%分の税金の払い戻し手続きなどで、企業や国民の負担は増えると言われている。こうした負担以上の景気浮上効果があるかは疑問だ。

日本人への「増税」と外国人への「免税」を同時に進める政府の行動は矛盾している。まずは、日本国内の消費減税から行うべきだ。(冨野勝寛)

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