15日、日本新聞協会は、新聞や書籍などに対する消費税の軽減税率を求める声明「知識には軽減税率の適用を」を発表した。ネットでは「自分たちだけ特別扱いしろなんて」という怒りの声が上がっている。

同声明は、「欧州各国では、民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞、書籍、雑誌にゼロ税率や軽減税率を適用し、消費者が知識を得る負担を軽くしています」「新聞に軽減税率を適用するよう求めます」と主張している。

各紙記事は、イギリスやベルギーなど欧州各国が、新聞などへの消費税についてゼロ税率や軽減税率を適用していると紹介。「民主主義国家なら導入して当然」と言わんばかりだ。日本で2012年11月に行われた、1210人から回答を得たアンケートでは、75%の人が新聞や書籍への軽減税率適用を支持しているとも紹介した。

多くの人が賛成しているような印象を受けるが、ネット上では「ふざけている」「増税をあれだけ煽っておいて、自分たちだけ特別扱いしろなんて」という批判の声が上がっている(16日付J-CASTニュースほか)。

一方で、各種の軽減税率を適用した場合、税収増が期待より大幅に小さくなるという声もある。消費税を10%まで上げた場合に軽減税率を適用すれば、税収が3兆円減るとの試算もあり、せっかく増税した効果がそれほど出ない恐れがある。

また、すでに軽減税率を導入した国では、その適用の線引きについて税務当局と事業者との間で訴訟が頻発しているという。軽減の対象を巡って政治的利権を生んだり、具体的な適用範囲の交渉の場で政府との癒着がありうるとの指摘もある。

そう考えると、日本新聞協会によるこの声明自体が、「新聞の税金をまけてくれれば、政権にとって有利な報道をして寿命を伸ばしますよ。さもなくば……」という、現政権への暗黙のメッセージを含んではいないだろうか。

朝日新聞は11日付の社説で、安倍晋三首相の13兆円の補正予算について、その多くが公共事業にあてられようとしていることから、政権とゼネコン業界等との癒着をほのめかしたいかのように、「大型の補正予算は、衆院選での支持のお礼と夏の参院選に向けた期待料なのか」と揶揄している。

だが新聞各紙に、政権批判を手加減することへの「期待料」として軽減税率を求める意図がいささかでもあるとしたら、安倍政権と他業界の癒着を云々したり、「民主主義を支える公共財」を自称したりする資格はない。(居)

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