写真:Ken Wolter / Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 新型コロナ不況は、世界大恐慌並みの予感
  • 大不況を乗り越えた「ウェスティン・ホテルズ」のアイデア
  • 民間の知恵が、日本経済復活のカギ

新型コロナウィルス感染拡大に伴い、国民の間に漂う自粛ムードで、各企業は通常通りの営業が困難になっている。特に、航空、鉄道などの交通インフラ担う企業や、ディズニーランド、USJなどの娯楽施設は軒並み80%を超える4~6月期の収益減を記録した。

これまでの予測では、日本の国内総生産(GDP)は大幅なマイナスが確実視されている。そのため今回の不況は、1929年の世界大恐慌と比べて論じられることが多い。

ホテルの経費を削減する「ホテル連合」のアイデア

大不況の兆しが見える中、かつての世界大恐慌時に生まれ、世界的なホテルチェーンとなった「ウェスティン・ホテル」の事例を紹介したい。同ホテルは、全世界37カ国に展開する一流ホテルブランドだ。

世界大恐慌下、アメリカ国内の失業率は25%に上り、平均給与は42%減、工業生産高は48%下落した。旅行はおろか、ビジネスなどで移動する人も減ったため、ホテルの利用者は激減した。アメリカ国内の85%のホテルが廃業に追い込まれたのだ。

そうした厳しい世相の中、シアトルでホテル業を営むセバート・ターストンは朝食中、同業他社のフランク・デユパーを偶然見かけた。そこでターストンは、近頃のホテル経営について意見を交換した。

2人が経営するホテルは破たん寸前の状態で、デユパーが経営するホテルに至っては半分以上の従業員を解雇し、稼働する部屋を3分の1にまで減らしていた。2人のホテルだけではなく、シアトルにあるホテル全体の稼働率も16%程度しかなく、壊滅的な状態だった。

2人が議論した末に編み出したのが、「ホテルマネジメントカンパニー(運営会社)」というものだった。売り上げは減る一方でありながら、経費は変わらない。そこで、ホテルの会計、広告、購買、予約、人事などを複数のホテルで共有することにより、経費を削減する「運営会社」のアイデアを思いついた。

ホテルの業務以外を請け負う代わりに、売り上げの1%をもらい、ホテルを総合的にマネジメントする。これが、「ウェスティン・ホテル」の始まりとなる。2人と同じように苦境に立たされた18人ものホテルオーナーが、ウェスティン・ホテルズの傘下に加わった。

その後1931年には、毎月多額の赤字を出す高級ホテルを、わずか90日で黒字に転換することに成功。グループに属する18社のうち6社も、経営状況が改善し、独自で運営することになった。倒産寸前の"弱小"ホテルの経営者が生み出した「ホテル連合」のアイデアは、多くのホテルを救ったのだ。

統制ではなく、民間に自由を

世界大恐慌の中でウェスティン・ホテルが誕生し、今日まで生き残れたのは、先達の「アイデア」があったからだろう。ホテル1社だとどうにもならない事態でも、ホテルのサービス業務以外で経費の削減を図ろうとした工夫が、多くのホテルを救うことになったのだ。

こうしたアイデアは、八方ふさがりにも見える困難を突破させる力を企業に与え、社会に対して革新をもたらしてくれる。

現代に目を向けると、日本では、政府や自治体が「自粛ムード」を国民に促し、休業要請や開店時間の短縮などで、企業の営業の自由の足かせをつくっている。これはもはや、一種の「統制経済」のようにも見える。

しかし、大不況に突入しそうな状況だからこそ、お上の統制を破り、不況を打破しようとする企業の自助努力を尊重しなければならない。ウィスティンの経営者のように、国民各自の知恵を信じれば、日本経済を復活させられるのではないか。

(竹内光風)

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