《本記事のポイント》

  • 専門家会議の副議長が「経済のプロからも提言を」
  • 自粛ムードの中、続く倒産
  • 原発再稼働も、規制委に責任転嫁か

新型コロナウィルスをめぐる政治家の判断が、「医療の専門家の意見」に偏っていると、専門家自身が苦言を呈している。

緊急事態宣言を5月31日まで延長するという判断の前提になったのが、医療の専門家で構成される政府の専門家会議からの提言だ。そんな中、4日に行われた政府の専門家会議で、副座長の尾身茂氏の発言が注目を集めている。

尾身氏は、専門家会議のメンバーが「ほとんど医療、公衆衛生、ウィルス学などの専門家」であるとして、「経済的なインパクト等々について、もちろん市民としての感覚はあるが、評価したり、どうしたらいいかという専門性がない」と指摘。

その上で政府に対して「公衆衛生・感染症のプロと経済のプロから政府に対して提言がいき、政府がその両方を見た上で最終的な判断をする」よう、以前から提案していた。政府からは「何とかしよう」との回答を得たという。

現在、政府は5月末の期限を待たずに緊急事態宣言を解除することも含めて検討を始めており、14日をめどに、感染者数の動向などを評価、判断する意向。すでに13の特定警戒都道府県以外では、事業者への休業要請の解除が始まっている。

ただ、都道府県を越えた移動の自粛要請は継続。西村康稔経済再生担当相は、都市部などで平日の人出が増えていることを指して「若干の緩みが生じている可能性がある」と発言し、自粛の延長を要請した。

つまり、日本を覆う「自粛ムードの一掃」には至っていない。そんな中、刻一刻と、各企業のタイムリミットが迫っている。

自粛ムードの中、続く倒産

帝国データバンクの調査では、コロナの影響で7日までに119社が倒産したことが分かっている。最も多い職種がホテル・旅館業で、居酒屋やレストラン、婦人服や靴・雑貨などが続いている。

3月に不渡りになった手形は、1560件と、昨年同月比の倍になっていた。2回不渡りを出すと取引停止になり、事実上の倒産に追い込まれるが、4月末は、全国銀行協会が企業への処分を猶予する対応を取っていたのだ。

しかし、このまま自粛が続けば売り上げの見通しが立たない。手形や小切手を現金化しようとしていた企業のほうが資金不足に追い込まれかねず、今後、経営危機に陥る企業が出てくることが危惧されている。

緊急事態宣言によって、「経済を回さない」ようにしたことの影響は、後になってから深刻に出てくる。早急な宣言の解除が必要である。

エネルギーについても「規制委」の暴走を止めよ

同様の問題は、「原発の再稼働」に関しても言える。

現在、日本は原発のほとんどを止めており、電力供給の8割程度を化石燃料に頼っている。化石燃料の価格が高騰すれば、日本の電気料金の高騰、電力会社の経営危機は避けられない。そうなれば、産業全体に大きなダメージが出てくる。

本来、エネルギー供給の方法は重要な政治判断だ。「原発を止めると、日本経済にどのような影響をもたらすのか」「エネルギー供給が不安定になると、国防上、どのような問題が起きるのか」という問題をはらむからだ。しかし、政府は原子力規制委員会の検査合格を原発再稼働の前提条件にしており、規制委に責任転嫁してしまっている。

中国はコロナ禍に乗じて南シナ海に新行政区を設定。日本の尖閣諸島付近でも中国公船が領海侵犯を繰り返す。台湾近海や南シナ海で軍事衝突が起こる可能性も想定する必要がある。また、中東でも紛争のリスクが高まっている。化石燃料の海上輸送路や産油国の情勢を鑑みれば、「原発」という選択肢を捨てるわけにはいかないだろう。

本来、運転を継続しながら原発の安全性を高めていくことは可能である。実質的な安全性が確保された原発をすぐに再稼働する必要がある。

日本の経済、ひいては国民の生活を守る判断は、政治家に託されている。「専門家への責任転嫁」による政治判断には注意が必要だ。

(河本晴恵)

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