「日本人自らが、自国を護るために何が最善かを考えるべきです」 米シンクタンク研究員インタビュー

「日本人自らが、自国を護るために何が最善かを考えるべきです」 米シンクタンク研究員インタビュー

 

中東情勢が緊迫する中、アメリカの外交専門家に中東問題や日米関係についてインタビューを行った。

(聞き手:片岡眞有子)

 

ダグ・バンドウ

プロフィール

米保守系シンクタンク「Cato Institute」の上級研究員。外交政策と市民の自由を専門とする。レーガン政権では特別顧問を務めた。米ウォール・ストリート・ジャーナルやナショナル・インタレスト、ワシントン・タイムズ紙などで執筆している。

 

 

「アメリカには、よりバランスの取れた中東政策が必要です」

──イランへの対応を巡り、あなたはトランプ政権を批判してきました。特に、前大統領補佐官のジョン・ボルトン氏の強硬姿勢を問題視していました。アメリカの中東政策はどうあるべきだと思われますか。

ダグ・バンドウ氏(以下、バンドウ): アメリカには、よりバランスの取れた中東政策が必要です。サウジアラビアはさまざまな面においてイランよりも危険であり、米政府はサウジの肩を持つべきではありません。

 

例えば、サウジによるイエメン攻撃は、明白なパワーポリティックスに基づく武力侵略です。また、サウジでは人道主義も危機にあります。レバノンの首相を拘束し、自国のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏を殺害するなど、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の下でさらに圧政が進んでいます。

 

サウジは、シリアの急進的な反乱者たちを支援し、リビアの内戦を助長させ、抑圧的なバーレーンやエジプト政府もサポートしてきました。加えて、数年に渡って、ワッハーブ派と呼ばれるイスラム原理主義を金銭的に支援してきました。このワッハーブ派とは非常に不寛容な考えを持ち、ムスリムではない人々に対して暴力をふるう宗派です。

 

したがって、中東の安定という観点から見ると、サウジはとても大きな問題です。

 

──米政府は、イランこそが中東に混乱をもたらしていると批判しています。

バンドウ: 残念ながら、米政府はこの件において信頼に足りません。ほぼすべての人々が、ジョージ・W・ブッシュ政権は、アメリカ国民にウソをついてイラクとの戦争を始めたという事実を知っています。

 

もし、米政府がサウジの石油施設攻撃についてイランを責めたいのであれば、複数の確実な証拠を見つけるべきです。他の国々が、イランの関与を主張するだけの確実な証拠を示すようアメリカに求めることは、非常に妥当なことだと思います。日本政府は現在、米政府のやり方に満足していないようですが、この懐疑的な態度はとても正常なものです。

 

──歴史的に、アメリカはイスラエルの味方をしてきました。このスタンスについて、公平性という観点からどうお考えでしょうか。

バンドウ: 残念ながらネタニヤフ政権は、イスラエルとパレスチナによる「2国家共存」の可能性を破壊しているように見えますし、トランプ政権はこの点においてネタニヤフ政権を助長しています。

 

私の願いは、パレスチナとの和平に向けてより積極的な新しい政権が誕生することです。そうすれば、米政府も和平に向けて喜んで協力するでしょうし、パレスチナの人々の筋の通った主張を認めようと試みるはずです。

 

 

「中国は重大な脅威であり、日本はそれに対してもっと国力を割くべきです」

──あなたは、日本と韓国からの米軍撤退を主張しています。もちろん自分の国は自分で護るべきだと考えていますが、なぜ、米軍の撤退を主張されるのでしょうか。

バンドウ: なぜなら、アメリカに護ってほしいと思っている他の人々を護ることは、アメリカの仕事ではないと信じているからです。

 

現在、アメリカはヨーロッパの国々を護ることになっています。アジアの国々を護ることになっています。中東の国々を護ることになっています。しかし、アメリカにはそうするだけの経済的余裕がありません。これは、アメリカ国民に対するアンフェアな負担です。

 

第二次世界大戦が終わって70年以上が経ちました。産業化し裕福になったアメリカの友人たちは、自らの力で自国を護れるようになるべきです。自国の軍事に予算を割かない豊かな国々を永遠にアメリカが護るというのは、私の目から見るとナンセンスです。自国の防衛費に予算を割くか否かは、彼らが自由に選択すべきものです。

 

国防にいくら投資するかを各国に指示するのはアメリカの仕事ではありませんし、国防に予算を割かないと選択した国を護るために、アメリカがより多く支払わなければならないというのは、まったく理にかないません。

 

──あなたは、韓国の核武装化についても言及されています。日本の核保有も自然なことだとお考えですか。

バンドウ: 核兵器を持つか否かという決断は、韓国においても日本においても、明らかに議論を呼ぶものでしょう。

 

ですが私は、その決断は各国の国民がすべきものだと考えています。ただ、もう一度申し上げますが、ここで問うべきは、「最善の国防はどうあるべきか」ということです。今日、アメリカは「核の傘」と呼ばれるものを諸国に広げています。

 

つまりアメリカは、他の国々を護るために自国が保有する核兵器を使い、それに対して核による報復を受ける危険性を甘んじると言っているわけです。私は、なぜアメリカがこうしたリスクを負うべきなのかが分かりません。

 

特に、北朝鮮は核兵器とアメリカに届くミサイルを開発しています。アメリカが、同盟国のために核攻撃の応酬の危険を負う正当性はどこにもありません。アメリカの同盟国は、自国を護る最善の方法に基づき、自ら決断すべきです。アメリカが自国を護ってくれることを期待すべきではありません。

 

──日本の憲法9条についてはいかがですか。

バンドウ: これは日本の問題であり、アメリカの問題ではありません。

 

日本政府は、自衛隊を設立するため憲法9条の解釈において創造性を発揮してきました。アメリカにいる身として、私は日本に対して何をすべきかを言うつもりはありません。私はただ、アメリカが何をしようとしているのかを説明するだけです。

 

もし日本人が、「アメリカは日本を中国から護るべきだ」と考えているのであれば、日本がGDPの1%しか国防に充てていないにもかかわらず、アメリカが3.5~4%も軍事に費やすことが求められるべきではないということです。

 

中国は重大な脅威であり、日本はそれに対してもっと国力を割くべきです。ただ、それは日本が決める問題であり、アメリカが決めるべき問題ではありません。憲法改正の問題は日本国民によって決断されるべきです。私は、日本が何をすべきかについてアメリカがレクチャーすべきだとは思いません。

 

アメリカがすべきことは、アメリカがこれから何をしようとしているかを説明し、日本や韓国、ヨーロッパ諸国に対して、アメリカに依存するのではなく、もっと他の(独立国として)求められていることを指し示すことだと考えています。

 

──ありがとうございました。

 

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