《本記事のポイント》

  • 金正恩氏は粛清を増大させ、幹部の心が離れている。
  • 文在寅政権は「北と組めば日本を経済的に抜ける」と豪語。韓国国民も従北意識。
  • 制裁解除で、金体制は延命する。

韓国政府は8月22日、日本に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告した。その直後の24日、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを発射した。文在寅政権の「日韓関係を決裂へと向かわせながら、南北の統一を急ぐ」という方針は、北のミサイル実験を容認するようなもの。今後も北朝鮮は実験を加速させていく可能性が高い。

防衛省が9月27日に発表した防衛白書においても、北朝鮮が同時発射能力や奇襲攻撃能力を急速に強化しつつあることが明記された。

日本にとっての北朝鮮の軍事的脅威はどのような段階に来ているのか。さまざまな識者の意見を紹介する。

1960年代に日本の帰国事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人の家庭で生まれ、9歳から19歳の10年間を強制収容所で過ごした経験を持つ脱北者で活動家の姜哲煥(カン・チョルファン)氏がこのほど来日し、「NO FENCE(北朝鮮の強制収容所をなくすアクションの会)」主催の集会で講演。北朝鮮情勢や韓国の問題を詳しく語っている。

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朝鮮民主化運動活動家

姜哲煥

プロフィール

(カン・チョルファン)1968年平壌生まれ。帰国事業で、一族全員で北朝鮮に渡った後、一家全員政治犯として強制収容所に10年入れられた経験を持つ。1992年に韓国亡命後、NGO組織「ノース・コリア・ストラテジー・センター」を設立。韓国で朝鮮日報の北朝鮮専門記者として活躍しつつ収容所はじめ北朝鮮の人権実態を世界に告発し続けている。著書に『平壌の水槽』(ポプラ社)など。

かつてないほど粛清が行われる理由

北朝鮮では、権力機関が弱ってきています。国連の経済制裁が効いているためです。このため金正恩朝鮮労働党委員長は焦っている。非核化が進展したように見せて制裁解除に持っていくというのが戦略です。

金正恩朝鮮労働党委員長は北朝鮮の秘密警察である保衛省の幹部らを殺しました。保衛部の人間をここまで殺したのはかつてなかったことです。この粛清の結果、彼らの間に「我々はどうせ狩りに使う犬みたいなものなので、それほど真剣に人民の取り締まりをやる必要はないのではないか」という意識が広まりました。

また金正恩氏は、軍総政治局の不正蓄財問題にもメスを入れて、大佐クラスの幹部が粛清されました。300万ドルから、中には1000万ドルの外貨を所持していた者もいたようです。

金正恩氏の身辺警護を担当する護衛司令部に対しても不正蓄財の調査が行われました。資金の出所の分からないお金は、外国の情報機関からもらっているのではないかとの疑いがかけられ、99名が粛清されました。この結果、金氏と「運命を共にしいたい」と考える幹部はほぼいなくなっています。このようなことは北朝鮮の歴史のなかではかつてなかったことです。

要するに金正恩氏は、指導部を支えていたお金が底をついてきたので、幹部を粛清し、お金を巻き上げているわけです。その結果、権力機構を支えている者たちとの一体感を失いました。

金正恩氏を歓迎する韓国

北朝鮮の体制はいつでも崩壊し得ると思います。しかし韓国が変数として大きい。これまでも社会主義者が韓国の政権を担ったことがありましたが、日米韓の間にくさびを入れるようなことはしませんでした。

文在寅大統領は、8月上旬に「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、日本の経済に一気に追いつくことができる」と述べています。しかし最貧国の北を飲み込んで、日本に追いつけるという考えはまともではありません。

一方、北朝鮮は南を飲み込む野望があります。在韓米軍が撤収すれば、北朝鮮が韓国を飲み込むことは簡単です。韓国の街の真ん中で「金正恩大歓迎」という集会をやっても、公安は取り締まらない。韓国国民の約半分が従属的な意識になっていると言っていいでしょう。

制裁解除で金体制は半世紀延命

トランプ大統領は、北朝鮮が開発したものが長距離弾道ミサイル(ICBM)でなければ、選挙戦で「成果」だと強調ができる。しかしトランプ氏が甘くても、シンクタンクや民主党は分かっているので、ブレーキがかかるはずです。

北朝鮮への対策は、「国境封鎖を解く」、「情報の流入を阻止しているがそれを解除する」、「斬首作戦を実行する」などがあると思う。国連の経済制裁が効いているため、北朝鮮は寧辺核施設などの部分的な放棄を提案すると思いますが、北の提案に基づいて制裁を解除してはなりません。そうすれば金体制が50年は続きます。

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核ミサイル等の実験が続く北朝鮮問題は日本にとって喫緊の課題だが、米朝間の協議は進展していない。ポンペオ米国務長官は9月上旬、「数日から数週間以内に協議再開を期待する」と表明していたが、9月26日に「日程は決まっていない」と表明した。

「完全、検証可能、かつ、不可逆的」なリビア型の核廃棄にこだわってきたボルトン補佐官が解任された後、米朝会談の行方次第では、ICBM以外の保有を認める可能性もないわけではない。

しかも7月に発射したミサイルは「低空で標的に近づき、再び急上昇する」など複雑な軌道で飛ぶタイプで、迎撃が難しい。

またアメリカに拠点を置く北朝鮮分析サイト「38ノース」によると、北朝鮮は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験準備をしているという。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で安全保障学などを教える河田成治氏は、一連の実験とアメリカの対応について、こう述べる。

「トランプ大統領が、『短距離ミサイルは問題ない』と発言しているのは、裏の意味としては、『短距離ミサイルが届く日本や韓国こそが、非核化に向けて自力解決の姿勢を見せるべき安全保障上の大問題のはずで、アメリカに依存するのはおかしいのではないか』とも取れます。

新型の短距離ミサイルの量産と配備は、日本にこそ大きな脅威です。それまでの液体燃料が固体燃料に代わったために発射準備に時間がかからず、奇襲攻撃能力が格段にアップしました。さらに飛翔高度が低く大気中を飛ぶために、宇宙空間でしか作動しないセンサーを持つイージスミサイル(SM-3)では迎撃できないからです。

また開発中のSLBMは、米軍の先制攻撃から生き残って反撃できる可能性が高く、その標的は日本や韓国の軍事基地や重要インフラと考えられます。そのため、今後北朝鮮への先制攻撃などの軍事オプションは、ますます困難になるでしょう。これらの脅威が時間の経過とともに高まっている現実に、目をそむけるべきではありません」

北朝鮮の水爆実験後、元駐イスラエル大使の茂田弘氏は、「日韓が北の核の脅威に対抗して核武装を検討する意志を示すことが最も有効であろう。反核感情でそういうことは論外ということであれば、3回目の被爆国になる決意もしておくということであろう」と述べている。

憲法で為政者が国民の生存権を守らなければならないと規定されている以上、正当防衛を目的にした核武装による対応は、主権国家の当然の選択で、アメリカの善意に国家の生存を任せるのは、統治者としては国民を護る義務を果たしているとは言えない。「容認できない」などと言葉を強くすればいいという問題では済まない。

(長華子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『断末魔の文在寅 韓国大統領守護霊の霊言』 大川隆法著

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