ヘリ空母と称される護衛艦「いずも」。衣食住を自己完結できる自衛隊は災害救助で大きな力を発揮する。

香港デモをめぐり、当局の動きに対する市民の危機感が高まっている。

この週末には、取り締まりを強化する警察が死者数を隠しているという噂が広まったり、不信感を募らせた市民が数万人規模のデモを行い、アメリカ総領事館に支援を求めて行進したりした。

中国政府は、10月1日に北京の天安門広場で建国70周年記念式典を開き、習近平国家主席の重要講話や、式典後の軍事パレードを予定している。この式典を整然と行いたい中国政府は、香港と本土の境界付近に武装警察や人民解放軍を待機させ、武力鎮圧も辞さない構えを見せる。

香港には約2万5000人の日本人が滞在しているが、9月9日現在、外務省が示す香港の危険情報は、注意を促す最低レベルの1。「第二の天安門事件」がいつ起きてもおかしくない状況を考えれば、レベル3の渡航中止勧告やレベル4の退避勧告などに引き上げていくべきだろう。

「在外邦人の保護」は自衛権や国際法で認められている

同時に、日本政府は香港の「邦人保護」に動き始める必要がある。

国際社会において、自国民に危害が及ぶ恐れがある場合の在外邦人の保護は、自衛権や国連憲章などの国際法で認められている。

1976年、ハイジャックされた民間旅客機がウガンダの空港に着陸した際、イスラエルは自国民を救出するために、ウガンダ政府の合意を得ずに軍の特殊部隊を送り、人質を奪還した。1980年、イランで起きたアメリカ大使館人質事件でも、アメリカは「自衛権」を主張し、軍を派遣した(作戦は失敗)。

いずれも、外国にいる自国民への人権侵害を、国家の利益に対する重大な侵害とみなしている。こうしたことはさまざまな国が過去に何度も行ってきたが、それを行うか否かは最終的に、その国の政府の「意志」ということになる。

日本では、2013年のアルジェリア人質殺害事件後、海外の邦人保護に関する自衛隊法の整備が行われた。しかし、「戦闘行為が行われないと認められる」など、ハードルの高い3つの要件を満たさなければならず、極めて実現性が低いものになっている。

この法律自体が、国民の生命や自由を守るための幸福追求権を謳う憲法に違反している可能性が高い。

香港への自衛隊派遣は「災害派遣」である

軍事アレルギーの強い日本人の中には、「アメリカやイスラエルの真似はしなくていい」「他国に自衛隊を送るなんてやりすぎ」などの声もあるだろう。

だが、現に中国軍は鎮圧の構えを見せている。

1989年の天安門事件が突然始まったように、軍事独裁の中国がいつ香港デモの弾圧に乗り出し、いつ虐殺を始めるかは、誰にも分からない。

今の香港の危機的状況は、習近平政権がつくりだした「人的災害」とも言え、邦人保護のための自衛隊派遣は「災害派遣」と考えるべき時だろう。

阪神・淡路大震災や東日本大震災をはじめとするさまざまな災害では、自衛隊は多くの人命を救ってきた。

実は、自衛隊の災害派遣は、必ずしも派遣地域を日本国内に限っていない。

2001年、アメリカ領海内のハワイ沖で起きた「えひめ丸事故」では、愛媛県の水産高校の練習船に米海軍の原子力潜水艦が浮上・衝突して、教員・生徒9人が死亡した。この時、愛媛県から要請を受け、日本政府は海上自衛隊の潜水艦救難艦「ちはや」を災害派遣し、遺体捜索作業に当たらせた。

また、2016年に起きた熊本地震の際には、海上自衛隊のヘリ空母「いずも」が、初めて陸上自衛隊員160人と車両40両を載せ、災害派遣に参加している。いずもは、乗員以外に約450人収容でき、食糧や医療行為なども自己完結できるため、災害対策としては極めて有用だ。

習氏守護霊「現地の判断で『ゴー』は出るようになっている」

自由のために、戦うべきは今

『自由のために、戦うべきは今』

大川隆法著

幸福の科学出版

大川隆法・幸福の科学総裁が9月3日に行った習近平氏と香港の活動家アグネス・チョウ(周庭)さんの守護霊霊言で、習氏の守護霊はこう語った(以下の引用部分は、『自由のために、戦うべきは今』より)。

すでに (人民解放軍が香港の) 周りに集結しているっていうことはね、現地の判断で『ゴー』は出るようにはなっているということだよな。 〈中略〉 『何人投入して、どのくらい捕まえて、どのくらい殺すか』っていうような、そこまで私は指示していないよ。ただ、『制圧せよ』ということは言うわな

一方、こうした状況に危機感を募らせる周さんの守護霊は、「 アメリカ、イギリス、日本の三つが軍隊を送ってきたら、われわれは戦い続けることが可能です。ただ、みんなが"知らん顔"をした場合には、われわれは倒され、台湾も次に倒されることになると思います 」と切実に訴えた。

日本は香港沖への「自衛隊派遣」を宣言し、米英と連携すべき

国際社会は、10月1日の式典に向けて習近平政権が一気に強硬手段に出る可能性を警戒しなければならない。

隣国であり、香港に多くの自国民がいる日本は、邦人保護の名目で、早急に香港沖へのヘリ空母「いずも」の派遣を議論し、宣言し、行動を起こす必要がある。合わせて、香港市民が支援を求めるアメリカや旧宗主国のイギリスと連携し、災害対策の意味も含め、この海域に日米英の軍艦を浮かべるべきだ。

中国は現在、アメリカとの貿易戦争で経済が不調に陥り、国内に不満が溜まっている。そうした中で、日本が邦人保護を名目にした「自衛隊派遣」を議論するだけでも、習近平政権にとって大きな外交の失点となり、中国国内の突き上げも激しくなり、「習近平降ろし」が始まる可能性がある。

この動きが加速すれば、中国の強圧的な独裁政治に変化が起きるはずだ。

安倍政権や日本のマスコミはただただ現状の追認を続け、善悪の価値判断から逃げている。だが、在外邦人を守るのか否か、香港の自由を守るのか否か、中国の覇権拡大を阻止するのか否か、スタンスを明確にし、議論し、行動すべきだろう。

中国の民主化につながるチャンスが、今、訪れている。

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