《本記事のポイント》

  • 北朝鮮を核保有国として認める案が浮上?!
  • トランプ政権は中東に集中したい
  • 日米安保条約を前提とした9条改正案は愚案

米政権内で北朝鮮に核・ミサイル開発を「凍結」させる案が検討されているという。

そうなると、現在、北朝鮮が保有する20個から60個の核と、それを搭載できるミサイルを温存することになる。米ニューヨーク・タイムズ紙とウオール・ストリート・ジャーナル紙は米政権の政府高官の話として報じた。

もしこれが本当なら、米政府のこれまでの方針「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」からの大きな後退を意味し、事実上アメリカは、北朝鮮をインドやパキスタンのような核保有国と認めることになる。

ジョン・ボルトン大統領補佐官はこの案をツイッターで真っ向から否定。ボルトン氏は、3度目の首脳会談が開催されるには「非核化をするという戦略的な意思決定をしたということが示されなければならない」とコメントしていた。

二正面作戦を避けるトランプ政権

6月30日に非武装地帯(DMZ)で電撃的に行われた米朝首脳会談は、シンガポールやベトナムでの会談よりも長い51分。実務者協議の担当者を決め、今月中旬にも協議を再開する見通しとなった。

千葉県のハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で安全保障学などを教える河田成治氏は、この展開について、こう述べる。

「経済制裁が効いていて外貨が不足しつつある北朝鮮は、内部の暴発を避けるために、交渉に応じたのではないでしょうか。

一方でトランプ大統領は、議会から北朝鮮問題について進捗がないことを追及されるのは避けたいはずです。交渉を再開することで、議会に対しても手を打っているという姿勢を示すことができます。

またトランプ氏は当初、一期目で北朝鮮問題を片づけられると考えていたフシがありますが、非核化には10年以上かかる長い工程が必要なことを認識したのかもしれません。2期目に入れば再選を目指さなくてよいため、大胆な行動に出ることができるでしょう」

別の見方としては、イラン問題を優先するための「アジアにおける一時的な休戦」というものがある。G20 開催中に行われたトランプ氏と、習近平・中国国家主席との会談の結果、アメリカの農産品の輸入拡大とひきかえに、中国への制裁関税の発動を見送り、ファーウェイに部品供給の許可まで認めた。

北朝鮮の脅威に対処するために、9条の改正を

イランは「核合意」の履行義務を果たさないと宣言したとはいえ、まだ核保有国となっていない。3.67%の低濃縮ウランを300キロ持っているにすぎず、核爆弾をつくるための90%以上の高濃縮ウランは保有していない。核爆弾1個を製造するためには、1年以上かかるとされている。

一方、北朝鮮は20個から60個の核爆弾を持っている。イランの核は日本に使われる可能性はゼロに近いが、北朝鮮が日本に核ミサイルを発射する可能性は極めて高い。

また北朝鮮の場合、通常兵器で日本を攻撃することも可能である。そう考えたときに、憲法9条の改正は喫緊の課題であり、次の選挙の最大の争点でなければならない。

こうした危機の時代に、自民党は、戦力不保持を定め、交戦権を否定する9条2項を温存した上で、自衛隊の存在を明記するという「加憲」の案を示している。これは「専守防衛」の維持を意味する。

「平和憲法」は日米安保条約があって可能だった

専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使する」というもの。このような交戦権を否定し「盾」に徹する「専守防衛」体制を維持できたのは、アメリカが「矛」として攻撃能力を維持しているからで、9条に象徴される「平和憲法」は、日米安保条約とセットで初めて存在できたといえる。

だがトランプ氏は、日米安保条約は不平等と主張。米FOXビジネスのインタビューでは日米安全保障条約に言及し、「日本が攻撃されれば、アメリカは第三次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」と強調。その上で「でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」と不満を表明した。

日米安保条約があって初めて国の体制を守れる日本。この日米安保条約がぐらつくのであれば、日本は「盾」だけでなく「矛」も備えなければならない。それには「交戦権の否定や戦力不保持を定めた9条2項」の削除が求められる。9条を改正し、自衛隊を国防軍と位置付けると主張しているのは、幸福実現党のみである。

だが自民党の憲法議論は、この事実から目を逸らしている。日米安保条約が機能しているうちは、このような条文を温存する「甘え」が許されてきたが、トランプ氏の「不満」から日米安保が将来的に破棄されるようなことがあれば、私たちの生命、安全、財産は危険にさらされる。

日本国民は生命、安全、財産を守ってもらえるように、納税の義務を果たすのと引き換えに、政府に権力を託している。しかし自民党の改正案を見ると、遠い将来まで考えて国民の権利を守ろうとする決意が感じられない。

むしろ透けて見えるのは、左右抱き込みで多数派形成をしたいという党利党略である。

昨今の北朝鮮に対するアメリカのスタンスやトランプ氏の日米安保条約への「不満」を考慮すれば、国民は、自分たちの生命、安全、財産を守るため、権力を委託すべき人物は誰かを真剣に考えるべきときに来ている。参院選はまさに私たちの生命がかかった選挙と言える。

(長華子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『新・日本国憲法試案』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=110

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2019年6月22日 元・北朝鮮エリート外交官が来日 「生涯かけて北の体制崩壊のために働きかけたい」

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2019年4月19日付本欄 北が新型戦術誘導兵器の発射実験 トランプ氏を振り向かせようと焦り始めた金正恩氏

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2019年5月8日付本欄 伊藤貫氏インタビュー「日本は核保有すべきか」(前編)

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2019年5月19日付本欄 伊藤貫氏インタビュー「日本は核保有すべきか」(後編)

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