東京都内で講演する、イランのエブテカール副大統領。

《本記事のポイント》

  • 東京都内でイランのマスメ・エブテカール副大統領が講演
  • イランは、イスラム国の掃討、難民の受け入れなどで国際的使命を果たしている
  • アメリカは、イスラムの宗教・文化に敬意と寛容さを示す必要がある

イランのマスメ・エブテカール女性・家庭環境担当副大統領が来日し、27日、東京・虎ノ門の笹川平和財団で「イランにおける女性のエンパワメント」と題して講演を行った。

同財団とイラン女性・家庭環境担当副大統領府は、2017年度より、日本・イラン両国の女性のエンパワメントに関する共同研究を行っている。

この日、エブテカール氏は、イラン・イスラム革命から40年の女性の社会進出の状況について語ると共に、アメリカとの間で高まる緊張についても言及した。

家庭での女性の仕事はもっと評価されるべき

日本人にとって意外かもしれないが、イランでは1979年のイラン革命以降に女性の就学率が増えた。革命以前は、女性を学校に送ることは懐疑的だったというが、革命後はそれが改善し、女性の就学率が増え、平均寿命も1976年当時と比べると20歳も伸びたという。

現在、イランでは、女性の高学歴化が進んではいるが、女性が労働人口に占める割合は15~17%ほどだという。女性の就業率を増やすために、エブテカール氏は、次のように述べた。

「イランでは法律上、家族を養うのは男性です。私は、男性がこの役割を担いつつ、女性が就業したり起業したりできるよう、家庭の中での男性の仕事を増やしていくことが大事だと考えています」

「10年間にわたって、女性の経済的価値について測定したことがあります。家庭の中の仕事であってもGDPに算出すると22~23%を占めることが分かっています。ですから、主婦だといっても貢献していないわけではなく、彼女たちの経済的価値はもっと認められるべきなのです」

イランはイスラム国の掃討に貢献してきた

また、高まるイランとアメリカとの緊張に関し、エブテカール氏はこう強調した。

「私たちは、中東の平和と安定に貢献してきました。また私たちは、イスラム国はテロリストのグループであり、イスラムと関係がないと考えています。テロ根絶に向けてイランは協力してきたのです」

「アフガニスタンが攻撃を受けた結果、多くの難民が生まれました。イランは約300万人から400万人のアフガン難民を受け入れています。しかしアフガニスタンで戦争をしたのは、私たちではありません。本来であれば、国際社会が引き受けるべき責任と義務を私たちが担っています」

「イラン核合意について言えば、私たちは核合意で求められている義務を順守してきました。アメリカは一方的に核合意を離脱し、制裁をかけています。それはイランの経済大国化を防ぐのが目的だったと思います。しかし、イランは尊厳のある国家ですから、圧力の下での交渉はできません。アメリカのドローンを撃ち落としましたが、それはイランの領空を飛んでいたからです」

「一方で私たちは、緊張状態のエスカレーションを望んでいるわけではありません。中東は私たちの家ですから、私たちは主権や国境を守る権利があります。自国を防衛するだけの軍事力もあります」

「核合意の構成国と日本は、イランが中東で難民の受け入れや、イスラム国の撲滅、違法ドラックの取り締まり面などで果たしてきた役割を正しく理解し、イランをサポートしてほしいのです」

アメリカはイスラムの宗教・文化に敬意と寛容さを示す必要がある

アメリカは、イランに圧力をかけ続ければ、いずれ交渉に応じ、新たな核合意を結べると考えているようだ。

だが、エブテカール氏が述べるように、イランは歴史と伝統のある「尊厳のある国家」。新しく科した経済制裁について、イラン政府は「アメリカとイランとの間の外交チャネルを永久に絶つものに等しい」と反発し、「イランは核合意を維持する義務はない」と発表している。

このイランに対する制裁強化は、1941年当時の日本に対する包囲網に似て、「戦争か、従属か」の二者択一を迫っているようにも見える。

イランは、座して死を待つより、戦争に訴えることがあるかもしれない。もとよりそのようなエスカレーションはトランプ政権も望んではいないだろう。

アメリカは戦争を仕掛けさせるような外交政策を採ってはならない。また日本は、イランが中東で行ってきたイスラム国の撲滅に果たした役割や難民の受け入れなどを正当に評価し、国際世論に訴えることも必要だ。

さらにイランに対して、宗教的・文化的な面での理解を深め、イランの宗教的伝統への敬意と寛容さを示すことも求められる。

今回、エブテカール氏が講演で語ったイランの家庭観や女性の社会進出のあるべき姿は、明らかに欧米型とは異なるものであった。欧米化は近代化とイコールではない。アメリカは、イランが核開発をやめて欧米型の繁栄の道を選ぶことを半ば強要しているが、トランプ氏に足りないのは異なる宗教や文明に対する深い理解だろう。

キッシンジャーが著書『世界秩序』で指摘したように、宗教が国際政治を揺るがす大きな要素になりつつある今、日本は中東の宗教的・文化的な観点からも、両者を架橋する使命を果たすべきだ。

(長華子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『日本の使命』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2210

【関連記事】

2019年6月24日付本欄 「アメリカはイランを攻撃すべきではない」 大川総裁が北海道で講演

https://the-liberty.com/article/15943/

2019年6月20日付本欄 アメリカとイランの対立:日本には仲裁する宗教的使命がある

https://the-liberty.com/article/15896/

2019年6月15日付本欄 イラン問題をどう考えるべきか ロウハニ大統領、ハメネイ師の守護霊霊言

https://the-liberty.com/article/15878/