トランプ大統領「イランとの戦争望まない」:トランプ氏が最大限の圧力をイランにかけるワケ

トランプ大統領「イランとの戦争望まない」:トランプ氏が最大限の圧力をイランにかけるワケ

(画像はWikipediaより)

 

《本記事のポイント》

  • トランプ氏の目的は軍事的圧力を強めつつイランを協議の席に着かせること
  • トランプ氏は核合意から離脱して、完全な非核化をイランに求めている
  • 日本は、イランとイスラエルの仲立ちができる立場

 

非核化をめぐるアメリカとイランとの関係が、まるで戦争前夜のようにも見える。

 

そんななかトランプ大統領は19日、ツイッターで「もしイランが戦いたいなら、それはイランの正式な終わりとなるだろう。アメリカを二度と脅すな!」と書き込んだ。中東に空母や戦略爆撃機を派遣するなど、圧力強化を図った。

 

24日付AP通信によると、国防総省は1万人の増派をホワイトハウスに求める予定だという。こうした報道を見ると、戦端が開かれる可能性もあるかのような印象を受ける。しかし、それはトランプ氏の本意ではない。

 

トランプ氏は一連の対立を受けて記者団に、「イランと戦争するつもりなのか」と聞かれ、「できればやりたくない」と返答した。

 

シャナハン米国防長官代行も、「現時点の最大の焦点は、イランの誤った判断を避けることだ。(目的は)抑止であって戦争ではない」と述べている。

 

トランプ氏の目的は、武力行使をちらつかせつつも、あくまでイランを新たな包括的核合意に向けた協議の席に着かせることだ。

 

 

アメリカの核合意からの離脱

まずここで、両国の交渉の現在地を確認したい。ことの発端は、トランプ氏がオバマ政権時代の2015年に結ばれた核合意を、「イランの脅威に対応できていない」として2018年に離脱したことだった。

 

現在、アメリカは北朝鮮に対して「最終的で完全に検証された非核化」を求めている。一方、2015年のイラン核合意では「最終的」という部分がそもそも担保されていない。核開発能力を続ける余地が残されているのだ。

 

そうしたなかイランは、2017年に弾道ミサイルの実験に成功。このミサイルは射程2000キロで、複数の弾頭を搭載できる多弾頭型だ。イランとイスラエルとの距離は約1700キロであるため、もしイランが核開発に成功すれば、その時点でイスラエルへ核攻撃が可能となる。また、北朝鮮の長距離弾道ミサイルの技術がイランに流出すれば、イランはワシントンDCを射程に入れて核攻撃を行うことも可能となる。

 

このためトランプ氏は、不完全な核合意を離脱し、未来永劫に渡って核開発ができなくなる状態づくりを急いでいる。

 

そのために行っているのが「最大限の制裁」だ。トランプ政権は2日、イラン産原油の禁輸で、2018年11月から一定期間、日本などの地域に認めてきた適用除外を撤廃し、全面的な禁輸措置を発動した。またイランが核合意の履行を一部停止するとしたのを受け、鉄鋼やアルミニウム、銅などの取引も大統領令によって禁じた。

 

とりわけ「適用除外の撤廃」は予想以上に厳しい結果を招いた。日本、韓国、欧州などはイランから原油の購入を止めざるを得なかったため、同国では物価上昇や雇用の悪化を招いている。

 

イランは外貨準備を取り崩すなどしているが、庶民の暮らしは圧迫されているため、どこまで持つかは時間との戦いとなっている。

 

 

アメリカは条件を満たせば制裁を緩和する

だがそもそもトランプ氏は、対決を望んでいるわけではなく、制裁を緩和する用意がある。

 

ポンペオ米国務長官は2018年5月に発表した「ウラン濃縮の完全停止」や「国際原子力機関(IAEA)によるすべての核関連査察の受け入れ」、「弾道ミサイルの開発停止」を含む12項目をイランに要求したが、その項目の実行次第では制裁緩和の可能性があるのだ。

 

ポンペオ氏は、21日の米ラジオ番組のインタビューで、「残念ながらイランに実行を迫った12の項目はどれも基本的で合理的ですが、どれも実行されていません」と答えている。

 

 

イランはいずれ対話の場に引きずり出される

トランプ氏は、大陸弾道ミサイル(ICBM)の発射や核実験を行う北朝鮮に対し、「最大の圧力」をかけた後に、金正恩朝鮮労働党委員長との対話を実現させた。同様に今回もイランに対して兵糧攻めをすることで「対話」から新たな包括的な合意の実現を目指しているといえる。

 

もちろん悠長に待っているわけではない。トランプ氏が退陣後、民主党の大統領が生まれ、イランの核合意にアメリカが復帰すれば、いずれイランは核武装し、イスラエルやアメリカを脅かす。トランプ氏は、その芽を自身の任期中に摘んでおこうとするだろう。

 

一連のトランプ政権の姿勢は、「対話待ち」だが「強硬」なのである。

 

 

日本は「仲立ち」ができるだけの責任を持てるのか

最後につけ加えたい点が、日本に求められる役割だ。

 

イランの核開発には、イスラエルが核武装国として周辺国を圧迫しているという背景がある。そんななか、トランプ氏は親イスラエルの姿勢を加速させている。6月に「世紀のディール」と呼ぶ中東和平案を発表の予定だが、イスラエル寄りの内容になるとも言われている。

 

例えば、現在イスラエルはユダヤ人をヨルダン川西岸に入植させて領土を拡張しているが、トランプ政権は「黙認」している。現在ヨルダン川西岸に入植するユダヤ人は40万人。これはパレスチナとの二国家共存の否定であり、それを黙認することは必ずしも中立的とはいえないだろう。

 

イランが核武装すれば、サウジ、エジプトも核武装し、イスラエルが存亡の危機を迎えるのみならず、核拡散の未来がやってくるのは確かだ。しかしイランの非核化に取り組むトランプ政権の「イスラエルびいき」は、また別の禍根を残しかねない。

 

緊張が高まる中、16日にイランのザリフ外相が来日し、「トランプ大統領との橋渡し」を求めた。「橋渡しは無理だ」という弱音も外務省関係者にはあるようだが、安倍首相は6月中旬にイラン訪問を決断したようだ。

 

日本は中東に歴史的な禍根のない国家で、仲立ちは受け入れられやすい。唯一の被爆国として日本は核拡散を阻止する戦略を持ち、両者を橋渡しする必要がある。

(長華子)

 

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タグ: トランプ大統領  アメリカ  イラン  戦争  武力行使  核合意  制裁  

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