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《本記事のポイント》

  • 増税や最低賃金で衰退するニューヨークやカルフォルニア
  • 一般教書演説で社会主義に「待った」をかけたトランプ大統領
  • 日本もアメリカのように「税制のあり方」について議論を

アメリカで社会主義と資本主義がせめぎあっている。

ニューヨーク州ではこのところ、2億ドル規模の財政赤字が出ている。というのも、人口が1000人単位でフロリダやテキサスに流出しているからだ。

増税がニューヨークをむしばむ

大きな理由の一つが税制だ。民間の独立税制調査機関のタックス・ファウンデーションが調査した「税制面から見てビジネスがしやすいかどうか」についてのランキングで、ニューヨーク州は全米最下位層をさまよっている。

このような状況に対し、比較的左派に分類されるニューヨーク市長のアンドリュー・クオモ氏でさえ5日、「富裕層に税金を課すと、富裕層はいなくなってしまう」と発言している。事態の深刻さが伺える。

それでも同州には、まだ増税風が吹いている。

昨年、同州の下院議員にアレキサンドリア・オカシオ=コルテス氏が最年少で当選した。彼女はマイケル・サンダースに劣らぬ社会民主主義者。富裕層に対する70%の課税を公約に掲げている。

最低賃金がカルフォルニアを衰退させる

社会主義の影はカルフォルニア州にもしのびよる。

アメリカでは、2012年から始まった「最低賃金を15ドルに!(The Fight for $15)」という大運動の結果、18の州と20以上の市で最低賃金を15ドルにすることが決まっている。これは従業員の成果とは関係なく、給与を上げて、企業の「福祉施設化」を狙う政策だ。

そうした中、カリフォルニアでは、チップの有無に関係なく、最低賃金は11ドルと定められている。しかも段階的に最低賃金が引き上げられ、2022年には15ドルとなる予定である。ちなみに連邦政府が定めている最低賃金は7.25ドル。同州はそれをはるかに上回る水準だ。

企業も従業員の人件費がかさめば、生き残れなくなる。本当はカリフォルニアでビジネスをしたくても、転出に追い込まれるか、オートメーション化で人件費を減らすしかない。

近年、トヨタが北米のカリフォルニア州からテキサス州へ、日産がカリフォルニア州からテネシー州へと本社機能を移転している。

高い税率を課す州から移転するのは、競争力を高めるために自然なこと。最低賃金の引上げは、雇用を減らす結果につながるのだ。

それでもアメリカ全土で、社会主義風はやまない。

先に述べた最低賃金については、民主党が連邦レベルでも採用するよう党の政策として掲げており、下院では181人の議員の賛同、上院では31人の賛同を得ているという。また若年層は、資本主義より社会主義を好ましいと思っているという世論調査もある。

反社会主義の立場をとるトランプ氏

こうした社会主義風に「待った」をかけているのが、トランプ大統領だ。

トランプ氏は、一般教書演説において、「今夜、私たちは社会主義の国家にはならないという決意を新たにします(Tonight, we renew our resolve that America will never be a socialist country)」と宣言した。

この時、トランプ大統領はベネズエラに言及した。ベネズエラはほとんどすべての企業を国営化した結果、崩壊したのだ。同国からは富裕層も脱出しており、ニューヨーク州、カリフォルニア州からの富裕層の脱出と、規模は違えども同じ原理だ。社会主義の実験が、また一つ失敗したことになる。

苦虫をかみつぶしたような顔でこの演説を聞いていたのは、サンダース上院議員。早速反論をしている。

しかしトランプ氏の大型減税によって、アメリカは好景気を取り戻し、アフリカ系アメリカ人や高卒者の雇用が増えている。ケネディ大統領が述べたように、「上げ潮はすべての人を引き上げる」のである。サンダース氏やコルテス氏の社会民主主義者はこの点を見誤っている。

とはいえアメリカでは、「社会主義か資本主義か」という議論が活発に行われている。経済面では与党も野党も左派である日本よりもましかもしれない。わが国も、もう少し視野を広げ、税制のあり方そのものについて議論をする必要があるだろう。

(長華子)

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