2019年2月号記事

国造りプロジェクト Vol.03

わが子がドローンに救助される日

「死者ゼロ」への未来型防災

大阪北部地震、巨大台風の多発、西日本豪雨、北海道胆振東部地震─。

天災が"忘れる前"にやってくる時代になった。

災害の常識が変わるなら、防災の常識も変えるときではないか。

(編集部 馬場光太郎、山本泉)


contents


Interview

Idea 08

防災でコミュニティをつくる

主体的に避難することの大切さを訴える専門家に話を聞いた。

東京大学情報学環

特任教授

片田敏孝

(かただ・としたか)1960年生まれ。専門は災害社会工学。災害への危機管理対応などを研究するとともに、地域での防災活動を全国各地で展開している。著書に『人が死なない防災』(集英社新書)がある。

防災における最大の問題は、「津波などの懸念が高くても住民が逃げない」ということです。

例えば2003年の宮城県沖地震で、気仙沼市は震度5強を観測しました。幸い津波は起きませんでしたが、この時、住民の津波を意識した避難率はたったの1.7%でした。

背景にあるのは、人任せの姿勢です。1959年、伊勢湾台風が甚大な被害をもたらしたことを契機に、行政主導の防災が一気に進められてきました。

その結果、災害による死者数が10分の1ほどに減りましたが、弊害も生まれました。海沿いに堤防をつくるのもお役所。ハザードマップをつくるのもお役所。避難しなければいけない時に「逃げろ」と知らせるのもお役所。避難先で食料を出してくれるのもお役所。 国民に、「命を守る主体性」が完全になくなっていった。 ハード面の安全性は高まったものの、国民は“災害過保護"とでも言うべき状態に陥ったのです。

そこにさらに、 災害があっても「自分は大丈夫」と思い込む心理作用が働きます。これを、「正常化の偏見」と言います。 自分が死ぬことを考えられないのは人間の性です。

必要なのは、ハードだけでなくソフト、つまり国土強靭化に釣り合う"国民強靭化"です。

ではそのためにどうすればいいのでしょうか。

次ページからのポイント

「知識」より「姿勢」

インタビュー 「アリバイ行政」が防災を遅らせる / 濱口和久氏