文在寅大統領( Wikipedia より)。

《本記事のポイント》

  • 日韓合意は、外交的な"モルヒネ"に過ぎなかった
  • 反日ムード、反日の教師組合、「性奴隷」の言葉……全て日本人がつくった
  • まずは、政治家の思考回路や、日本人の意識の中にある間違いを正すべき

韓国の文在寅大統領は10日、新年の記者会見で、日韓合意について、「誤ったもつれは解かなければならない」「日本が心をこめて謝罪してこそ(中略)完全な慰安婦問題の解決だと思う」と述べた。

日韓関係修復のために結ばれた「日韓合意」は、事実上、骨抜きになった。

残ったのは、日本が2015年に「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」と、世界に再発信したという事実だけ。

充分に予想された展開なだけに、日本の自業自得の感も否めない。

その場しのぎで謝罪して、友好関係と政権を延命させるが、時間が経てば必ず効果は切れる。その度に国の根幹は少しずつ蝕まれていく――。日韓合意は、外交的な"モルヒネ"に過ぎなかったのだ。

しかし、日本の"モルヒネ外交"はもう意味がないことに気づかなければならない。そして、「従軍慰安婦の嘘」という病巣を取り除く"根本治療"に、とりかからなければならない。

韓国の「反日やりすぎ?」ムードを潰したのは日本

そもそも、韓国における「従軍慰安婦の嘘」「反日主義」という病巣自体も、日本が輸出したものだった。

実は韓国にはかつて、「反日教育の内容に、無理があるのではないか」というムードがあったこともあった。韓国では、「日帝が韓国を収奪した」と教えられている。そのことに対して、「根拠に欠ける。むしろ朝鮮人の所得が増えている」という冷静な意見も出ていた。

そのムードを潰したのは、日本の方だった。1982年、日本のマスコミが、「教科書検定において、日本の中国『侵略』が『進出』に書き換えられた」という誤報を出したのだ。

それを機に、韓国の日本に対する猛烈な抗議が始まった。韓国は歴史を冷静に見直す機会を失う。教科書はさらに反日化し、以下のように記述されるようになった。

「日本は帝国主義よりもさらに残忍にアジア各国を蹂躙し、二十世紀の歴史を悲劇で飾った第二次世界大戦を起こした。(中略)このような悲劇は日本の朝鮮強占ではじまった」(『高等学校世界史』1990年)

「反日の震源地=全教組」をつくったのは日教組

韓国における"反日の震源地"をつくったのも、日本だ。

それは、韓国における左派の教員労組「全教組」。ここに所属する教師たちは、日本大使館前で行われるデモに生徒を連れ行くなど、韓国人でさえ眉をしかめる「反日教育」を行う。これが、韓国が「反日」でまとまる性質をつくりあげてきた大きな要因だ。

この組織の設立を支援したのは、日本の日教組だった。日教組は80年代から韓国に入り、教員組合のつくり方を指導したのだ。その結果、1987年に韓国では「全教組」が生まれてしまった。

「sex slaves」の発明者も日本人

「従軍慰安婦問題」を最初にでっち上げたのが吉田清治という日本人であることは有名だ。しかし、慰安婦に「sex slaves(性奴隷)」というインパクト絶大な訳語をつけ、世界に広げたのも日本人であることは、あまり知られていない。

犯人は、戸塚悦朗という元弁護士。彼は、「従軍慰安婦問題」を国連で取り上げてもらうように、34年間もの間、国連に属する無数の委員会や作業部会に出席して、働きかけ続けた。そして、戸塚氏が「sex slaves」のという訳語を開発。その時、委員たちは初めて関心を示したという。

とうとう1993年、差別防止少数者保護小委員会が戦時奴隷制に関する決議を採決。日本国内の「虚構」が、国際的な「常識」になる発端を開いた。

こうした中で、アジア各国で反日デモが広がる。日本政府はその批判をしのぐために1993年、「河野談話」という最初の"モルヒネ"を打った。その結果、「世紀の冤罪」が確定してしまったのだ。

さながら「お地蔵さん」と化している「慰安婦像」

韓国における「従軍慰安婦」を、偽宗教になぞらえる声がある。歴史に確固たる誇りがない中、国をまとめるためにつくられつつある「国教」だ。本尊である慰安婦像には、毎日参拝者が訪れ、帽子や服を着せる。お地蔵さんさながらだ。

しかし、そんな偽宗教の開祖や、中興の祖は、軒並み日本人だったことになる。

日本のマスコミが反日という「布教の素地」を整え、日教組が「伝道組織」を立ち上げ、吉田清治と朝日新聞が「基本教義」を立て、戸塚悦朗が「sex slaves」という、「南無阿弥陀仏」さながらの「お題目」を編み出したのだ。

韓国の非常識さを非難する声は、もちろんあるだろう。しかし、「従軍慰安婦問題」を発生させ、ここまで長引かせてきたのは、日本の責任でもある。「まずは、政治家の思考回路や、日本人の意識の中にある間違いを正すべき」という視点が、慰安婦問題解決には必要だ。

(馬場光太郎)

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