2017年1月号記事

北海道「収入倍増」計画

新幹線で世界とつながる

北海道には、まだまだ発展する潜在力がある。北海道を訪れ、見えてきたものとは。

(編集部 山下格史、小林真由美、片岡眞有子 / 写真 皆本直)

「同じ北海道なのに、札幌まで特急列車で行くと、5時間以上かかる。交通インフラがいかにぜい弱か分かるでしょう」

釧路の近くにあるJA浜中町の石橋榮紀組合長はそうこぼす。

北海道は人口減少や高齢化も深刻だ。地方には仕事が少なく、高校や大学卒業と同時に都市部に移る若者が多い。北海道の市町村の約8割は「消滅可能性都市(注1)」と試算されている。このままでは、北海道の約550万の人口は、2040年までに130万人以上減るという予測もある(注2)。

こうした低迷を打開する秘策が、「新幹線」だ。例えば、札幌から最北端の稚内までは、在来線の特急で約5時間かかるが、新幹線を使えば、2時間で移動できる(東海道新幹線の東京―岐阜羽島間で比較)。

北海道全体に新幹線が通ったら、どれほど発展できるだろうか。その可能性を探ってみたい。

(注1)母親になりうる20~39歳の女性が2040年までに半減する都市。 日本創成会議が試算。
(注2)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」より。

新幹線を全域に通せば仕事も所得も増える!

2016年3月に新青森 ― 新函館北斗間が開通した北海道新幹線。

今後、全域に張り巡らせば、北海道はもっと発展する。

交流人口

首都圏~北海道

3~5倍増!?

九州は新幹線でJR利用者が大幅増!

関西~熊本 約3倍

関西~鹿児島 約5倍

※2012年6月21日 熊本県議会議事録より。

時間短縮

(在来線を新幹線にした想定)

札幌 東京

約8.5時間→約5時間 3.5時間短縮

札幌 旭川

約1.5時間→約40分 50分短縮

札幌 函館

約3.5時間→約1時間 2.5時間短縮

札幌 釧路

約4時間→約1.5時間 2.5時間短縮

札幌 稚内

約5時間→約2時間 3時間短縮

移動時間の短縮でGDPが大幅増!

(比較は東海道新幹線の東京―大阪間)
※1人当たり実質GDPの推移は東 京大学大学院の岩本康志教授 が作成したもので、暦年データの 自然対数をとり、1885年を0に 基準化している。

札幌延伸だけで年間約900億円の経済効果!

※北海道総合政策部 交通政策局新幹線推進室より。

所得

1世帯 約5.8万円増!?

九州は新幹線で1世帯あたり約4.7万円増!

(観光収入を世帯数で割ったもの)
※藤井聡著『スーパー新幹線が日本を救う』を参考。
※北海道経済部 2011年調査より。

交通革命 実現のステップ

貨物新幹線を導入

津軽海峡に新しくトンネルまたは橋を架ける

全域に新幹線を敷く

首都圏や東北とつながり巨大な北海道経済圏ができあがる

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次ページからのポイント

インタビュー 新幹線は日本の「血管」 / 藤井聡氏

インタビュー 北海道は観光で4倍稼げる / 小磯修二氏

起業家精神で選ばれるモノをつくる / 「北海道から宇宙観光」の夢