2016年12月号記事

編集長コラム Monthly Column

マルクス主義の時代に終止符を打つ

―中国で平和的な「政権交代」を

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誰がマスコミ権力を止めるのか

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米大統領選の真の争点は、中国の台頭にどう対処するかだろう。米政府自身、2020年代には中国が日本を支配下に置くことを予測している(注)。

これが単なる最強国の交代ならいいが、 マルクス主義を信奉し、神仏を否定する唯物論国家が覇権を握ることを意味する。

中国国内では言論・信教の自由がなく、数百万人が拘束されている。唯物論だから人間は機械にすぎず、殺しても罪の意識はない。そんな「悪魔の思想」が世界を覆うことになる。

アメリカがこのまま後退していくなら、その分、日本が役割を肩代わりしていくしかない。

(注)アメリカ政府の情報機関が2008年に出した「グローバル・トレンド2025」。

中国はソ連崩壊の原因を研究

マルクス主義との戦いでは、アメリカは1991年、ソ連を崩壊させた。 中国共産党はその原因を研究し、「ソ連の轍は踏まない」と決意を固めている。

第一の原因は、経済戦争と軍拡競争に負けたことだ。

戦後すぐ、米外交官ジョージ・ケナン(1904~2005年)は、「日本とドイツと共にソ連を軍事的・経済的に封じ込めるべきだ」という戦略を立て、それが対ソ方針となった。

80年代、レーガン大統領がソ連に軍拡競争を仕掛けた。ソ連のゴルバチョフ書記長は、「ソ連の非効率な経済では勝負にならない」と白旗を挙げた。

中国共産党が資本主義を採っているのはソ連の反面教師。稼いだお金を軍拡に注ぎ込み、アメリカに対抗している。

「マルクス主義は捨てない」

第二の原因は「グラスノスチ(情報公開)」。 ゴルバチョフは1985年、言論の自由、つまり政府を批判する自由を認めた。翌年のチェルノブイリ原発事故もあり、官僚組織の無能と共産党の腐敗が明らかになった。

中国の習近平国家主席には、「言論の自由は絶対に認めない」という信念があるようだ。習氏も含め中国の最高幹部は何千億円という規模の資産を海外に移している。その一部が欧米メディアでは報道されるが、習氏は国内のメディアやネットの規制を強化し、廃刊やサイト閉鎖、関係者拘束を頻発させている。

ソ連崩壊の原因の第三は、中枢のエリートが自ら「もうマルクス主義は要らない」と決断したことだ。

だからこそ習氏は"異分子"を排除し、「習独裁」を固めている。習氏は2012年、こう語った。「ソ連共産党はなぜ崩壊したのか。重要な原因の一つは、理念や信念が揺らいだからだ」

マルクス主義を絶対に捨てないという信念が習氏にはある。

経済・軍事競争に負けない

中国の王朝交代は長期の内戦がつきものだが、できうればソ連解体や日本の明治維新のように、大量の血が流れない「政権交代」が望ましい。そのために、ケナンが立てたような 「共産中国封じ込め」の大戦略 が要る。

「ソ連封じ込め」にならえば、 第一に経済的にも軍事的にも日米が中国に負けるわけにはいかない。 25年間もGDP(国内総生産)が伸びない日本は、今までにない成長戦略が不可欠だ。

レーガンのような軍拡競争までいかなくても、日米のほかロシア、インド、台湾など宗教を大切にする国々が結集し、対中国の包囲網を築いておきたい。

日米で民主派の支援を

「封じ込め」策の第二は「情報公開」。

今年5月に公表された「パナマ文書」で、租税回避地を通じて中国指導層が海外に資産を逃している実態が明らかになった。当然、中国政府は国内で一切報道させない。日本のメディアは、日本の数万円単位の「政治とカネ」を糾弾するなら、中国の数千億円の腐敗を追うべきだろう。

第三は中国の「一党独裁」にくさびを打ち込めるかどうか。

中国の人々は一部の党幹部も含め、海外を見て、民主主義の意味を理解しており、複数政党制を選ぶのは時間の問題だ。米政府は「全米民主主義基金」という民間団体をつくり、民主活動家やチベット・ウイグル独立派を資金援助している。

かつて日本は、1912年に成立した中華民国での近代国家建設を、国を挙げて支援した。その後の内戦の泥沼化で成功しなかったが、中国の民主化を後押しする責任は、アメリカだけではなく日本にもある。

「神を憎む宗教」を葬る

「封じ込め」の最終目標は、唯物論国家が二度と地上に現われないようにすることにある。

マルクス主義が「神を憎む宗教」であることはよく指摘される。マルクスは青年時代、こんな詩を書いた。「高いところに君臨しているあの者に復讐したい」

彼の人生は不遇で、勤めていた新聞が廃刊になったり、極貧のなか3人の子供を亡くしたりした。その中で「神も天国・地獄もない」唯物論思想を構築した。

マルクスが説く"救済"は、貧しい人はお金持ちから資産を強制的に奪っていいということ。唯物論では人間は機械にすぎないので、「一人が同じ時間働いて生み出す富の総量は一定。なのに格差があるのはおかしい」とマルクスは主張した。

聖書は、なぜ人が貧しくなったり豊かになったりするのかを明らかにしていない。人間はどう考えればいいのか。

「仏は、一定の実力がある者を成功させようとするのです。その人の心がけ、努力の仕方、そうしたものが一定レベル以上になれば、その人は必ず、成功の想念というもののなかに、その流れのなかに入ってきます。そして、あちこちでいろいろな成功が起きていくことになります」 (大川隆法著『愛の原点』)

神仏が立てた法則は、「富の総量は一定」ではなく、「富はいくらでも生み出せる」ということだ。 新時代の宗教思想が、マルクスの「神を憎む宗教」を葬り去ることだろう。

「弾丸ひとつ使わず」

中国が平和裏にマルクス主義を捨てるには、為政者が「人間は神仏の子であり、一人ひとりに人生を切り開く自由がある」と理解する必要がある。

幸福の科学の大川隆法総裁は2012年3月の法話「未来を拓く悟りの力」でこう述べた。

「次は政治のほうで、『マルクス・レーニン主義を捨てる』と、公式にトップが発表すれば済むことです」

「私は、弾丸ひとつ使わず、世界の平和をつくってみたいと基本的に考えています」

幸福の科学は愛と慈悲を説く。この新しい宗教が大陸に広がるなかで、 次の中国の革命は、過去の王朝交代とは違った平和的なものになる可能性がある。

中国本土に台湾のような民主主義の国ができるなら、世界が数百年の平和と繁栄を築く重要な一歩となる。

(綾織次郎)

ソ連が崩壊した原因

(1) 経済戦争と軍拡競争に負けた。

(2) 情報公開で共産党の腐敗が明らかになった。

(3) 中枢エリートがマルクス主義放棄を決断した。

ソ連の衛星国であったルーマニアでも、レーニン像が撤去された。写真:AP/アフロ

共産中国の封じ込め策

(1) 日米などが経済・軍事で負けない。

(2) 共産党の腐敗を中国国民に知らせる。

(3) 日米で民主派を支援する。

(4) マルクス思想を葬り去る。

1989年の天安門事件前の様子。こうした民主化デモはこの後、できなくなった。 写真:AP/アフロ