ウクライナ情勢:戦況はロシア勝利に向かっている トランプ氏の復活なくして米軍は中国に専念できない(Part 3) 【HSU河田成治氏寄稿】
2024.01.27
《本記事のポイント》
- 米下院がウクライナ支援を拒否する理由とは?
- このままロシアが勝利すれば米露新冷戦が始まる
- NATO方面にかけるアメリカの軍事費は膨大に
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
昨年の12月の記事(「同時多発の戦火が連動し世界戦争の危機 イスラエル、ウクライナ、台湾情勢はどうなるのか?」)でお伝えしたとおり、ウクライナ戦争においてはロシア優勢、ウクライナ劣勢が明らかになってきました。
米国の軍事支援が米議会の承認を得られず、現時点で予算が底をついていることが大きな原因の一つです。今後、少なくとも昨年並みの予算が計上されなければ、ウクライナが攻勢をかけるどころか、今の領域を守るだけでも精一杯となるでしょう。
米下院がウクライナ支援を拒否する理由とは?
ジョンソン米下院議長は今年1月7日、インタビューに答えて、ホワイトハウスの要請するウクライナ支援を拒否している理由を次のように述べています(*1)。
「(1)ウクライナでの最終目標は何か? (2)アメリカの戦略は何か? (3)支援の活用状況についてどのようにウクライナを監視するのか? といった質問に答えるよう、懇願してきたにもかかわらず、バイデン政権から明確な説明がない。アメリカには34兆ドルもの連邦債務という深刻な問題があり、ウクライナ支援のためにはさらなる債務が必要になるにもかかわらず、アメリカ国民に対して、説明責任を果たしていない。その回答がなければ、資金を提供することは非常に困難だ」。
バイデン政権がこれらの質問に十分に回答できないなら、下院で過半数を占める共和党議員は、これまでのような多額の軍事予算で支援することに反対に回るでしょう。
さらに共和党は、「大統領がメキシコ国境の壁構築を再開しなければ、ウクライナの追加援助は認めない」として、まずはアメリカ国民の安全確保の予算を優先すべきと主張しています。
ただ、それでも低い予算ながら世界各国の支援自体は続きそうです。
例えば、欧州連合(EU)の枠組みによる支援もハンガリーの反対などで滞りがちですが、代わりに欧州諸国は二国間支援に重心を移して、引き続き支援を表明しています。
そのため、あとしばらくはズルズルと消耗戦が続き、ウクライナの国土と経済はますます破壊されて荒廃し、滅亡への道を歩むのではないかと危惧しています。ウクライナの人々の苦しみや悲しみを考えると、一刻も早い停戦が望まれます。
(*1)CBS NEWS(2024.1.7)
このままロシアが勝利すれば米露新冷戦が始まる
仮に停戦になったとしても、今後の米露関係は、非常に厳しいものとなるでしょう。バイデン政権が米露を決定的に敵対関係に陥らせたことで、ウクライナ戦争が終結しても、両国の関係はかつての米ソ冷戦時代のような様相になることが決定づけられてしまいました。
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画