死亡者5人 台湾が「新型コロナウィルス」対策に成功した4つの理由【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2020.04.15
《本記事のポイント》
- 台湾は、中国とWHOとの距離が功を奏した
- 蔡政権には、優秀なIT担当大臣と厚生大臣がいる
- 台湾は「一帯一路」と無縁だったことも幸い
周知の如く、我が国は4月、習近平・中国国家主席の訪日を控えていた。そのため安倍晋三首相は、武漢ウィルスである「新型コロナウィルス」(以下、新型コロナ)が問題化しても、中国人観光客をシャットアウトできなかった。3月5日になってようやく、日中間の合意により、習主席の訪日が延期となり、安倍首相は中国人の受け入れを拒否したのである。
小池百合子・東京都知事は、今夏に東京五輪があったため、都民に対し自粛要請をしなかった。ところが24日に、五輪の1年延期が決定した後、急に、外出を控えるよう要請し始めた。
以上のように、日本の対応には様々な疑問符が付く。
中国人の渡台をあっさりストップ
我が国に比べて、台湾政府の対策は目を見張るものだ。死亡者は5人に抑えられている。なぜ台湾は、新型コロナ対策に成功したのだろうか。
第1の理由は、民進党の蔡英文政権は、馬英九政権時代(2008年~16年)とは異なり、習近平政権に鋭く"対峙"していた。「独立派」と目される民進党は、中国共産党の提唱する「一国両制」(1国家、2制度)での「中台統一」をほとんど考えていない。
また1月11日、総統選挙・立法委員選挙で、民進党は勝利した。有権者が、政治的に中国大陸と距離を置く選択をしている。そのため台湾政府は、中国の武漢で新型コロナが発症すると、すぐさま中国人の渡台を厳しく制限した。これが結果的に良かった。
WHOの判断ミスに引きずられなかった
第2は、台湾が世界保健機関(WHO)に加盟していないことだ。これもある意味で幸いした。中国共産党の反対で、今なお台湾はオブザーバーですら参加できない。だからこそ蔡政権は素早い動きが取れた。皮肉である。
中国への"忖度"が止まないテドロス事務局長ですら、新型コロナに対して「行動すべき時期は実際、1カ月余りまたは2カ月前だった」と告白している。台湾はこの判断ミスに引きずられなかった。
実は、2002年から03年に東アジアで流行したSARS(サーズ)が蔓延した際、台湾では73人が犠牲になった。今回、この苦い経験が活かされている。そのため台湾は2018年夏、中国遼寧省で発症した「アフリカ豚コレラ」(ASF)の時にも、見事に感染をシャットアウトしている。
優秀な大臣がいた
第3は、蔡政権の2人の優秀な大臣の存在だ。
1人目となる唐鳳・IT担当大臣は、薬局におけるマスクの在庫状況が一目でわかるアプリを導入した。また、早くからマスクの記名購入制度を導入している。
もう1人の陳時中・衛生福利部大臣(厚生労働省に相当)は、新型コロナに関して、毎日丁寧な説明を心掛けている。また、記者の質問がなくなるまで会見を行っている。
今年3月26日に発表されたTVBSの世論調査では、陳時中への支持率(正確には満足度)は91%に上った。そこで蔡総統は、60%という高い支持率(同)を得ている。
「一帯一路」と無縁だった
第4は、台湾は習政権の「一帯一路」と"無縁"だったことだ。
EUの中では、中国の一帯一路に深く関わったイタリアとスペインが悲惨な状況に陥っている。中東では、中国との関係が密接なイランが大変な事態となっている。換言すれば、新型コロナが一帯一路を通じて運ばれたとも言えよう。
一方、我が国にも、習政権が推し進める一帯一路の礼賛者がいる。中国共産党の政策が、相手国との「ウィン・ウィン」となる経済関係だけにとどまれば何の問題はない。ところが、北京政府の真の狙いは世界的な軍事覇権である。
アメリカの「パクス・アメリカーナ」(アメリカによる平和)に代わり、「パクス・シニカ」(中国による"平和")を打ち立てる戦略の下、一帯一路が遂行されている。日本の一帯一路礼賛者は、その事に目をつむって経済的利益しか見ていない。
このようなバランスを欠いた視点が、感染拡大を招いた面があるのではないか。
アジア太平洋交流学会会長
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連書籍】
大川隆法著 幸福の科学出版
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「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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