ペンス副大統領「対中演説」のポイント解説 日本、台湾、香港にそれぞれ言及

2019.10.26

ウィルソン・センターで演説するペンス副大統領。写真:AP/アフロ

アメリカが対中政策の転換を宣言し、「米中新冷戦」の幕開けから1年が経った10月24日(現地時間)、ペンス米副大統領が、ワシントンの政策研究機関ウィルソン・センターで、「米中関係の将来」について演説を行った。

昨年の演説に続いて、中国を強く批判する内容となった。今回は、その内容を抜粋で紹介し、ポイントを補足解説する。

(1) トランプ大統領は中国の時代を終わらせた

ペンス氏: わずか20年未満の間に「世界史上最大の富の移転」が見られた。過去17年間で、中国の国内総生産(GDP)は9倍以上成長した。世界で2番目に大きな経済国となった。この成功の多くは、アメリカから中国への投資によるものだ。そうした時代は終わった。トランプ大統領は、3年未満でその物語を永遠に変えた。

補足解説: 日本も1990年代より一貫して、中国を重要なビジネスパートナーとしてきた。だがGDPの成長を見れば、中国は儲かり、日本が衰退したことは明らか。日本の富もまた、アメリカと同じく、中国に流出している。貿易は本来、ウィン・ウィンの関係でなければならない。

(2) アメリカ経済は強くなっている

ペンス氏: 専門家は、「わずか数年で中国経済がアメリカ経済を上回る」と予測していた。しかし、トランプ大統領が進めた大胆な経済政策のおかげで、すべてが変わった。大統領は、アメリカ史上最大の減税と税制改革に署名した。結果、アメリカ経済は世界史上最も強くなっている。

補足解説: 対中貿易などの不均衡の是正や、アメリカ史における歴史的な税制改革により、アメリカは再び力を取り戻した。そして、中国を引き離している。日本は「増税路線」を続けているが、これが誤りであることをアメリカは教えてくれている。

(3) 中国は宗教者を苦しめている

ペンス氏: 少数民族や宗教的少数派の数百万人が、宗教的・文化的なアイデンティティーを根絶しようとする、中国共産党の試みに苦しんでいる。中国共産党は、キリスト教の牧師の逮捕や聖書の販売禁止、教会の破壊、100万人以上のイスラム教徒のウイグル人の投獄に及んでいる。

補足解説: 中国は、高度な監視システムなどを通じて、宗教者の自由を著しく侵害している。これを受けてアメリカは、中国外交官のアメリカ国内での行動を規制するなど、対抗措置を打ち出している。

(4) 中国は尖閣諸島などを脅かしている

ペンス氏: この1年間での中国の軍事行動や近隣諸国へのアプローチは、ますます挑発的になった。中国の指導者たちは、2015年に「南シナ海を軍事化するつもりはない」と述べたが、人工島に対艦ミサイルや防空ミサイルなどを配備した。

東シナ海では、緊密な同盟国である日本において、中国の挑発に対する緊急発進の回数が今年、過去最多となる見通しだ。また中国の沿岸警備隊は、日本に施政権がある尖閣諸島の周辺海域に60日以上連続で艦船を送り込んだ。

補足解説: 中国の挑発はエスカレートしている。日本人14人を「反スパイ法」を根拠に逮捕し、すでに9人を起訴するなど、「人質外交」まで展開している。それにもかかわらず、日本政府は「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」との立場を示している。日中関係が正常ではないということは、誰が見ても明らかだろう。

(5) アメリカは台湾を支持する

ペンス氏: 私たちの政権は、これからも「1つの中国」政策を尊重していくが、中国はここ数年の小切手外交を通して、台湾を承認している2カ国以上に、中国の承認へと変えるよう仕向け、台湾の民主主義への圧力を強化している。

補足解説: 台湾との関係を強化することが、中国との約束を反故にすることにはならないと強調した。だが、そんな中国は今や、台湾に「一国二制度」を受け入れるように迫り、現状変更を試みている。日本はそれを追認・黙認せず、台湾を強力にサポートすべきだ。

(6) アメリカは香港とともにある

ペンス氏: この1年の間で、自由に対する中国共産党の反感を、香港の情勢ほど示したものはない。トランプ大統領は、「アメリカが自由を支持する」と明言してきた。(拍手) 私たちは国家の主権を尊重する。

当局が香港の抗議者に対して暴力で訴えれば、アメリカとの貿易交渉を妥結するのは、一層困難になると繰り返し言及してきた。(拍手) アメリカは香港の人々を尊重するように中国に促し続ける。そしてここ数カ月、権利を守るために平和的にデモを行ってきた香港の数百万人の人たちと、私たちはともにいる。

補足解説: アメリカが改めて、香港をサポートすることを明確にした。香港の民主活動家をはじめ、デモに参加・賛同する多くの人々が勇気づけられるだろう。

(7) 検閲を受け入れる米企業は「非アメリカ的」

ペンス氏: 人権侵害を故意に無視する進歩的な企業文化は、進歩的ではない。それは抑圧的だ。(拍手) アメリカの企業、プロスポーツ、プロ選手が検閲を受け入れるならば、それは単なる間違いではなく、非アメリカ的である。アメリカ企業は、国内と世界でアメリカの価値観のために立ち上がるべきだ。

補足解説: ペンス氏は昨年10月の演説で、プライバシーを軽視するグーグルを批判し、行動を改めるように要求した。根底には、利益追求を第一とする「グローバリズム」への批判がある。日本の一部企業も、中国の経済的利益に誘惑され、中国の要求に屈している。

演説はアメリカ政府の公式見解

ペンス氏の演説は今年6月から延期され続け、ようやく行われた形だ。内容は、昨年の演説に続いて、中国共産党体制を厳しく糾弾するものとなった。だが前回の演説では、香港情勢への言及はなかった。この1年で起きた問題を反映したという意味で、今回の演説は、「最新のアメリカ政府の公式見解」として注目に値する。

日米の演説を見比べると明らかだが、アメリカの政治が優れている点は、「善悪の価値判断」を明確にすることだ。アメリカは、「自由」「民主」「信仰」といった普遍的な価値観に基づき、我が国はこのような意思決定を行う、ということを明確に示している。日本の発信力に足りないのは、この点である。

日本はアメリカの政策と共同歩調をとり、世界の平和に貢献すべきだろう。

(山本慧)

【関連記事】

2018年10月7日付本欄 中国に「ブチ切れ」 ペンス米副大統領スピーチに見る、対中戦略の転換

https://the-liberty.com/article/14964/

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