「北朝鮮の国民は、民主化を望んでいる」脱北者インタビュー
2017.12.26
北朝鮮と韓国の軍事境界線(38度線)上にある共同警備区域を警備する兵士たち。韓国側から見た様子。写真:Panu Kosonen/Shutterstock
トランプ政権が、北朝鮮への軍事行動に出た際、「非核化で終わらせるか、体制崩壊・民主化まで持って行くか」というのは、一つの大きな論点だ。
もちろん、「さすがに体制崩壊させるのはやり過ぎだ」という声は多い。金正恩氏や政府上層部にとっては「侵略」と映るだろう。
しかし、北朝鮮に住む人々はどうだろうか――。
本欄では、2017年7月号に掲載された、脱北者の「非核化で終わらせず、民主化まで踏み込んでほしい」という声を紹介する。
(再掲元 http://the-liberty.com/article.php?item_id=13030 )
◆ ◆ ◆
朝鮮民主化運動活動家
姜哲煥
(カン・チョルファン)1968年日本生まれ。60年代の帰還事業時に一族で北朝鮮に渡り、一家全員政治犯として強制収容所に10年入れられた経験を持つ。脱北後NGO組織「ノース・コリア・ストラテジー・センター」を設立。著書に『平壌の水槽』(ポプラ社)など。家族はいまだに北朝鮮に残されたままである。
――北朝鮮の強制収容所はどんなところでしたか。
姜哲煥氏(以下、姜): 私子供や女性、老人まで政治犯として収容所に入れ、最低限の食料で過度な強制労働をさせる。そうして人々をシステマティックに殺す点で、ソ連のスターリンやナチスドイツのヒトラーがつくった収容所と似ています。
一方、親の罪を子供に転嫁していく連座制や、親兄弟とその子供の三代にわたって皆殺しにする「三代滅族」というやり方は、北朝鮮独自のものです。
非核化だけでいいのか?
――アメリカをはじめ国際社会は、北朝鮮の体制を変えることではなく、非核化が目的だとしていますが、どう思いますか。
姜: 北朝鮮はすでに、化学兵器や生物兵器も持っているので、核兵器を取り除けば問題が解決するわけではありません。
北朝鮮に住んでいる人たちの人権が無残に踏みにじられているのに、核問題さえ解決されればいいという態度では、北朝鮮の人権弾圧を放置することになってしまいます。
――韓国の新大統領誕生を受けて、アメリカは北朝鮮にどう対応するでしょうか。
姜: 文在寅氏の反米感情を考慮した場合、アメリカは独自に北朝鮮を攻撃する可能性もあるのではないでしょうか。韓国での左派政権の発足は、北朝鮮情勢の悪化につながると思います。
民主化に向けて何が必要か
2005年6月、著書を読み感銘を受けたブッシュ米大統領(当時)がホワイトハウスに姜氏を招待し、面会した。
――北朝鮮の民主化に向けて何が必要だと考えますか。
姜: まず、 中国による脱北者の強制送還を即刻止めるよう働きかけるべきです。強制送還をやめれば、北朝鮮の民主化を求める人が増え、活動を加速させることができます。
さらに、 北朝鮮へ西側の情報を送り込む活動を拡大する必要があります。 かつてルーマニアでは、外部の情報を入手した国民が、独裁者チャウシェスクを倒しました。
――北朝鮮には監視や密告のシステムがあって、住民が一斉蜂起するのは難しいのでは?
姜: そういう側面はあります。しかし近年、市場がかなり発達してきていて、市場での情報の流通を取り締まる保安員に抵抗する動きが起きてきています。
例えば昨年、豆満江地域の大規模水害で多くの人が亡くなったときに、北朝鮮の人々が「災害の現場になぜ金正恩が来ないのか」と怒りました。
以前は、危険なところに指導者は来ないものだと思わされていましたが、海外のニュースなどで指導者が災害の現場を訪問する姿を見て、人々の意識が変化したのです。このため政府は水害復旧にエネルギーを注がざるを得なくなりました。これは前代未聞のことです。
だから私たちは、ニュースなどの情報が入ったUSBメモリーを北朝鮮に送り込む活動を続けています。 人々の覚醒こそ、いかなる武器よりも強力な武器になるのです。
――北朝鮮には地下教会があると聞いています。
姜: かつて平壌は、東洋のエルサレムと言われるほど多くの人がキリスト教を信仰していました。今も中国経由で聖書を持ち込む人がいます。しかし、北朝鮮の秘密警察である保衛省は彼らを残虐に弾圧しています。
というのも、北朝鮮の政治体制は、キリスト教の教会組織を手本にしているので、キリスト教が広がり、別の信仰が立つと、体制が崩れてしまうからです。 信教の自由を含んだ「自由の風」が吹いたならば、それは民主化への原動力になると思います。
北朝鮮の未来を担うのは?
――金正恩体制が崩壊したら、どのような人たちが北朝鮮の未来を担っていくべきでしょうか。
姜: 韓国に来た脱北者たちが、北朝鮮に戻り、北朝鮮内の人々と協力して国造りをしていけるのではないかと考えています。
また、私は日韓関係がとても大事だと思っています。 体制転換後、北朝鮮のために支援してくれるのは周辺国ですから、 日韓関係を未来志向的なものにしていきたいです。
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「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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