中国に取り込まれつつあるトランプ政権 実利でなく、安全保障の重視を
2017.11.18
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《本記事のポイント》
- トランプ政権は、親中派からの圧力が強まっている
- 親中派は、米財界やトランプ・ファミリーの中にも
- 日本は国防強化を、トランプ大統領に「対中強硬」を迫ることが重要
対中強硬派と見られていたトランプ米政権が、少しずつ中国に取り込まれつつある――。
トランプ大統領は16日、中国の習近平国家主席が北朝鮮に特使を派遣すると発表したことについて、「大きな動きだ。何が起きるか注目しよう」とツイート。北朝鮮との対話の糸口を探っているとも考えられるが、この北朝鮮との対話は、中国が主張し続けてきたことだ。
また11月上旬に、トランプ大統領が訪中し、米中で28兆円規模の商談が成立した。これも、中国に丸め込まれつつある一例と言えよう。
著名な米財界人が精華大学の顧問委員に
対する習主席も、米政財界を取り込もうと動いている。
10月下旬、党大会が終わった後、習主席は母校である清華大学の「経済管理学院顧問委員会」(以下、顧問委員会)のメンバーと、座談会を行った。
顧問委員会のメンバーは50人ほどで、欧米の財閥が中心である。その代表的な人物が、米大手投資ファンド「ブラックストーン・グループ」のスティーブン・シュワルツマンCEO。「蘇世民」という中国名を持つほどの親中派で、清華大学にも莫大な寄付をしている。座談会でも、習主席と仲良く歓談していた。
他にも顧問委員会には、次のような著名な米財界人が多数名を連ねている(遠藤誉著『習近平VSトランプ』より)。
- 証券会社「ゴールドマン・サックス」のロイド・ブランクファイン会長
- 銀行「JPモルガン・チェース」のジェイミー・ダイモンCEO
- コンサルティング会社「マッキンゼー&カンパニー」のドミニク・バートンCEO
- 自動車会社「ゼネラル・モーターズ」のメアリー・バッラCEO
- IT会社「アップル」のティム・クックCEO
- 宇宙開発企業「スペースX」のイーロン・マスクCEO
- IT会社「フェイスブック」のマーク・ザッカーバーグCEO
習主席は、こうしたメンバーと懇意にしていると言われている。
トランプ政権内にまで侵食する親中派
中国政府にパイプを持つ米財界人はこれまで、トランプ政権に親中路線を取るよう、強い影響を与えてきた。
トランプ政権が昨年12月に立ち上げた「大統領戦略政策フォーラム」の議長は、先述した親中派のシュワルツマン氏。メンバーには、顧問委員会のジェイミー・ダイモン氏やイーロン・マスク氏も含まれていた。トランプ大統領はこのフォーラムを8月に解散させたが、依然として政権に大きな影響力を持っている。
さらにトランプ政権内でも、大統領の娘であるイヴァンカ氏と、その夫のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が「親中派」と目されている。
クシュナー氏は、中国の資本家からの投資を受け、不動産開発を行ってきた人物。イヴァンカ氏も自身のブランド「イヴァンカ・トランプ」の靴を中国広東省の工場で製造していた。
夫妻は、3人の子供に中国語を学ばせている。訪中したトランプ氏の歓迎晩さん会でも、娘のアラベラちゃんがチャイナドレス姿で中国語の曲を歌ったり、古典的な詩を暗唱したりして、中国で話題になったほどだ。
実利を取れば、そのツケが回ってくる
米財界にとってみれば、14億人の人口を持つ中国は"おいしい"市場だ。米中の貿易均衡を求めるトランプ氏も、同様の認識を持っているだろう。
さらに北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止でも、中国の協力は必要不可欠。親中派からの圧力や複雑な国際情勢の中、トランプ氏は「対中強硬姿勢を貫く」ことができなくなりつつある。
習主席は、トランプ氏との共同記者会見で「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言したように、米中で世界を二分する野望を隠さなかった。今後、アメリカが実利を重視していけば、中国が世界の覇権を握る可能性が高まる。
中国の軍事拡張で安全保障が脅かされている日本こそ、そうした実利に惑わされず、トランプ氏に対中強硬姿勢を貫くよう、強く訴える必要がある。日本としても、憲法9条の改正や核装備など、できる限りの国防強化を進めることが重要だ。
(山本泉)
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