23区内の大学、定員増を認めない方針 教育は国家の支配下にあるべきなのか
2017.08.15
政府は、大学生の東京への一極集中を是正する目的で、東京23区内の私立大学の定員を抑制する施策を進めている。12日付読売新聞は、文科省が大学設置に関する告示を改正し、2018年度から23区内での定員増を認めないことを明記すると報じた。
23区内に新しい学部を設置する場合は既存の学部の定員を減らして対応することが求められることになりそうだ。これまでの有識者会議では「学問の自由や教育を受ける権利に強い制約をかける」(早稲田大学・鎌田薫総長)など、反対論も出ていた。
文科省は14日、この告示の改正案について意見公募(パブリックコメント)の募集を開始。9月12日までに集まった意見を参考に修正した上で改正する見込みだ。
大学教育は国家の管理下に
しかし、「都心の大学の定員を減らし、地方に振り分ける」という発想は、教育活動が国家の管理下にある、という前提に立ったものだ。
現在、日本では、国公立大学だけでなく私立大学の教育内容についても、文科省の支配下にある。私立大学の大学設置を行う際も、文科省の審議会で、大学施設の規模や教員の人選、既存の学問の枠組みとの整合性などについて指摘される。それによって、これまでにない学部の設置が極めて難しくなっている。
今年1月には、文科省が幹部の大学への天下りをあっせんしていた問題で当時の責任者が相次いで辞任した。天下りの受け入れを条件に大学や学部の設置を認可したのではないかと疑われる事例も出てきている。また、4割以上が赤字経営と言われている私立大学にとって、補助金額の上下は死活問題となる。
「許認可権」や「補助金」により、各大学の手綱を引いているという現状があるのだ。
未来を創る教育は自由から生まれる
しかし、激しく社会が変化する中、中央政府の「計画経済」によって、10年、20年後に活躍する人材を輩出できるとは限らない。むしろ今必要なのは、大学教育の「自由化」だ。
大学の定員増の抑制や都心への新規学部の設置抑制は、それに逆行する。例えば政治・経済分野であれば、東京都心など都市部にキャンパスを置く方が、教育効果が高いと考える教育者がいるのは自然なことだろう。
各私立大学の経営責任は、結局、その大学が取ることになる。学生がどのような人材に育つかについても、政府が責任を取るわけではない。新しい学問の地平を開くのは、各大学の「企業家精神」であることを今一度見直してもらいたい。
(河本晴恵)
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