【参院選】アベノミクスの限界? サッチャーの政策に見る景気回復の鍵
2016.06.07
アベノミクスの限界――。安倍首相が消費税増税の再延期を表明したことにともない、複数のメディアがこの言葉を使って安倍政権の経済政策の行き詰まりを表現している。
しかし、消費税を8%に上げたとき、すでにその限界は見えていた。参院選でも争点となるアベノミクスについて、その失敗の原因を確認しておきたい。
最初のアベノミクスは「お金を使いやすくする」方向
2012年12月に第二次安倍政権が始めた、本来のアベノミクスの3本の矢はこうだった。
(1)日本銀行がお金をたくさん刷って(金融緩和)、(2)政府がインフラ補修など公共事業を行い(財政出動)、(3)規制を緩和して企業が新規事業を始めやすくし、新しい商品やサービスを生み出す(成長戦略)。
どれも市場にお金をたくさん出回らせ、民間企業や個人がお金を使いやすくするという方向性で貫かれている。もしこれをきちんと実行していれば、景気は回復しただろう。
消費増税は「お金を使いにくくする」方向
しかし安倍政権は、このうち金融緩和と財政出動は行ったものの、3本目の矢である規制緩和は十分に行うことができなかった。さらに影響が大きかったのは、企業や個人がお金を使いやすくするという方向性とは真逆の消費税増税を行ったこと。これでは、車のアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。
しかも、昨年9月に発表された「新3本の矢」では、規制緩和は消えてしまった。(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障の3つであり、経済政策というよりは社会保障政策に近い。
アベノミクスの命運を180度分けてしまうほど、減税と規制緩和の重要性は高い。
減税と規制緩和で救われた1980年代のイギリス
実際に減税と規制緩和で経済の低迷から脱出した例がある。1980年代のイギリス、サッチャー政権だ。国が国民の面倒を見ようとして高福祉政策で生じたイギリス病と呼ばれる国の停滞からイギリスを救った。
サッチャーは、税金に関しては、所得税の最高税率を83%から40%、最低税率を40%から30%にし、法人税率を中堅・大企業は52%から35%に、小企業は42%から25%まで減税した。規制緩和では、長距離バスの規制廃止やメガネの独占販売制度の廃止、事務弁護士が独占していた不動産譲渡手続きも一般に開放するなどの政策を実施した。
安倍政権は事実上の規制強化?
政府は2日の閣議で、「ニッポン1億総活躍プラン」や「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」などいくつかの計画を決定した。その中には、民泊や生乳の流通などで規制を緩和するなどの規制改革実施計画も含まれているが、全体としては、同一労働同一賃金の実現など、むしろ政府が民間の経営に口を出し、事実上の規制を強める内容が目立つ。
これでは逆効果になってしまう。本当の一億総活躍社会は、企業や国民が自分で稼いだお金を自由に使える幅を増やしてこそ実現する。それには、減税と規制緩和が必要だ。今の日本にもサッチャーが必要とされているのではないだろうか。(大)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『サッチャーのスピリチュアル・メッセージ~死後19時間での奇跡のインタビュー』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=933
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2015年12月号 減税と規制緩和で経済成長を - 「新3本の矢」はアベノミクスの終わり - The Liberty Opinion 3
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2016年1月13日付本欄 携帯料金の「官製値下げ」が具体化 電波の自由化が政府のやるべき仕事
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