北京で全人代が開幕中 習近平氏への権力集中が進む中国
2016.03.13
全人代の会場である人民大会堂。(画像は Wikipedia より)。
中国では、3月5日~16日にかけて、全国人民代表大会(全人代)が開催されている。ここでの議論から、習近平国家主席への権力集中が進んでいることが伺える。
全人代は、中国の憲法には、「最高の国家権力機関」と定められており、日本の国会にあたるものだ。毎年3月に10日間、北京の人民大会堂で開かれる。
全国の省や市、軍などから選ばれた代表、約3千人が参加し、その年の政府の運営方針を示す「政府活動報告」や法律の制定、予算案の審議や承認などを行う。
全人代の最大の注目点は、政府活動報告だ。李克強首相は、2時間近くかけ、政府活動報告を読み上げた。
李首相は、2020年のGDPと国民所得を2010年の2倍にするため、2016年のGDPの成長率を6.5%以上、インフレ率の目標は3%前後にすると表明。
また、重要項目として、減税によるマクロ経済の安定や、利益を出せないゾンビ企業の再編、「一帯一路」建設の推進などを指摘した。
「習近平」が「毛沢東」化している?
最後に李首相は、「核心意識、一致意識を強めなければならない」と述べ、「習主席は党中央の核心」であると、忠誠を示した。
習主席への権力集中は、日に日に明瞭になってきている。チベット自治区の代表団も、習主席が描かれたバッジをつけて、全人民に参加。複数の識者は、こうした光景が「毛沢東」時代を想起させると指摘している。
習主席は就任後、反腐敗キャンペーンと称して、次々と党の大物幹部を摘発。政府を批判する言論を発する者は、容赦なく拘束してきた。人民解放軍の大規模な組織改革も行ない、軍部の掌握も進めている。以前は党内でも、「政治改革」や「党内民主」の声も聞かれたが、今は聞かれなくなっているという。
香港では映画「十年」が大ヒット
その一方で、中国政府に対する反発は、確実に強まっている。例えば、香港では、中国が香港を支配するという悲惨な未来を描いた映画「十年」が大ヒットしている。
中国政府を批判する本を販売していた香港の書店関係者が、中国政府に拘束されて以来、香港を中国から分離すべきと主張する活動も活発になっている。
軍部の再編により、人民解放軍の中でも、待遇面での不満が広がっている。テロやクーデターが起こる可能性もあるという。
いずれは、中国共産党による独裁体制は崩され、中国も民主化されることになるだろう。だがその前に、香港や台湾、東南アジアなどの国々、そして日本が、中国に呑み込まれないとも限らない。今、その攻防戦が起きている。
(山本泉)
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