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中国の新聞「南方都市報」に掲載された、習近平国家主席を暗に批判する記事(下の写真参照)を書いた女性編集者が解雇処分になった。先月20日に掲載されその記事の見出しは、次のようなものだった。

「党と政府が作ったメディアは宣伝のための基地である。その姓は『党』とすべきである」。つまり、メディアは共産党の命令に従うべきだという意味だ。

一見、中国共産党や習氏を批判する記事には見えない。

だがその下に、「魂が海に帰る」との見出しで、党幹部の遺骨を散骨する写真を掲載。上と下の見出しを続けて読むと、「中国メディアの魂の死」と読める。

(左)2月20日付南方都市報の1面。赤で囲った部分が「中国メディアの魂の死」と読める。(画像は博聞社サイトより)
(右)2月20日付南方都市報電子版の1面。現在は、写真が変更されている。(画像は南方都市報電子版より)

この記事は、習氏がメディア統制を強めていることへの批判だとして、中国のネット上で大きな話題になっていた。

絶対服従を求められる中国メディア

こうした批判を抑えこむため、中国政府はメディア統制をさらに強めている。

南方都市報の報道があったのは、習氏が中国の主要メディアの視察をした次の日。共産党機関紙の人民日報、国営の新華社通信、中国中央テレビを一度に回った。これは極めて異例のことだ。

視察の際、中央テレビは次のような文字を大型テレビに映し出し、習氏を迎えた。

「中央テレビの姓は党です。絶対の忠誠を誓います。どうぞ検閲してください」

この文言に対し、ネット上では批判が続出し、炎上。だがこうした批判も、中国政府によって削除されてしまった。

また、ミニブログサイト「微博(ウェイボ)」で3700万人のフォロワーを持つ、元不動産会社会長・任志強(レン・ジーアン)氏のアカウントは2月下旬、中国政府に強制閉鎖された。

その理由は、習氏のメディア視察を受け、任氏が「メディアは人民の利益を代表しなくなった時、人民に捨てられ忘れられる」と微博に書き込んだためだ。この他にも、数百万~2千万人のフォロワーを持つ何人もの人気ブロガーのアカウントが閉鎖されている。

自由を求める運動は起きるのか

習氏がメディア統制を強める理由は、「焦り」との報道もある。国民の支持が離れているため、党のメディアを使って、自らの支持を演出しようとしているということだ。

だが中国国内では、「言論の自由」を求める声が少しずつ高まっている。今回の新聞の見出しにも、中国政府の目をかいくぐり、何とか中国政府を批判しようとする涙ぐましい努力が垣間見える。

表面的に見れば、中国メディアの魂は死んでいるのかもしれない。だが、その中にいる人々のジャーナリスト魂は、まだすべて死んではいない。

「自由」を求める運動が中国国民の中から起きて中国の政治体制を変える未来の種が、今、芽を出しつつあるのかもしれない。自由を求める中国人、加えて、台湾や香港の人々への支援を惜しんではならない。

(山本泉)

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