日銀総裁が春闘スタートを前に「賃上げ」要請 政府の過度な介入に注意

2016.01.07

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労働組合が、「賃上げ」や「労働時間の短縮」といった労働条件の改善を求めて企業と交渉する「春闘」がまもなくスタートする。

経団連などが5日に開催したパーティーに参加した黒田東彦・日銀総裁は、初めて壇上に立ち、「(日銀が目標とする)2%の物価上昇は、それに見合った賃金上昇がなければ持続可能ではない」と異例の挨拶をした。

その後、賃上げに前向きな大企業トップの、次のような発言が相次いだ。

  • 「賃金が働く意欲を増す方向で考える(日立製作所の中西宏明会長)」

  • 「業績が良ければ社員に還元するのは当然(パナソニックの長栄周作会長)」

  • 「デフレに引き戻されないためにはもう一息。賃上げはけん引役だ(大和証券グループ本社の日比野隆社長)」

  • 「賃上げは地方経済に波及するので重要だ(第一生命保険の渡辺光一郎社長)」

時を同じくして、台湾でも、16日の総統選投開票を控えて開かれた討論会で、最大野党の民進党・蔡英文主席と与党の国民党・朱立倫主席が経済政策を中心に激しく対立した。国民党の朱氏が「最低賃金の5割引き上げによる経済成長」を訴えたところ、民進党の蔡氏に「それで景気が回復するなら、ノーベル賞ものだ」と揶揄されていた。

自民党の安倍首相も2015年11月、企業経営者を前にした官民対話で、「産業界はしっかり賃上げに取り組んでほしい」と述べていたが、政府主導の賃上げは、本当に国力を高めるのだろうか。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『忍耐の時代の経営戦略』の中で、次のように述べている。

気になるところは、政府が、『消費税上げ』を言いながら、同時に、企業に対して、『給料を上げてくれ』と要求していることです。人件費に当たる給料のところを引き上げるようにお願いしているわけですが、これに対し、七割ぐらいの企業は戸惑っています

結局、(企業は)手持ちの内部留保を取り崩して、固定費といわれるものを均していくことになって、先行投資として取り組まなければいけない工場の建設だとか、今は利益が出ていないものに対して、人件費や研究費用、開発費用等をかけていくところが、止まり始めます

安倍首相や日銀総裁が賃上げの必要性をアピールした理由は、景気回復には賃上げを通じた「個人消費の底上げ」が不可欠と考えているためだ。「従業員の給料が上がって、手取りが増えれば、消費が増える」という考えだが、大企業のみならず、内部留保が少ない中小企業も賃上げを求められれば、倒産の原因となる恐れもある。本当に消費を底上げしたいなら、消費税減税などの思い切った策が必要だ。

そもそも政府が民間に賃上げ要請をすることは、自由主義経済からほど遠いと言わざるを得ない。企業は自由な競争条件の下、自らの経営戦略に基づいて雇用条件や投資計画を決めている。政府が企業に賃上げを"命令"することで、企業を発展させるために必要な投資も先細ってしまい、結果的として赤字企業が続出しては、まさに本末転倒だ。政府による経済への過度な介入には注意したい。

(小林真由美)

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タグ: 消費税  賃上げ  介入  自由競争  経団連  春闘  日銀 

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