アメリカのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」で、アジア・太平洋地域を担当するブラド・グロスマン氏がこのほど、アベノミクスの「新3本の矢」に対し、「根本的な問題に対して言及していない」として、日本経済の今後に悲観的な評論を発表した。

ブラド氏は、新3本の矢について「安倍首相の目標は、2020年までにGDPを600兆円にすることだが、それは年に3%の経済成長を必要とする。それは、1991年以降日本では一度も経験されていない」と指摘。これまでの延長線上では目標を実現できないとした。

また、女性の活躍を促している点についても「評価できるがそれだけでは、建設業や福祉分野での労働力不足を補うことはできない」とした。さらに、「移民受け入れは、労働力不足を解決する唯一の方法だが、日本が大量の外国人労働者の受け入れに扉を開くのにノリ気でないことはすでに証明されている」と苦言を呈している。

経済成長を「阻んで」いるのは何か

ブラド氏は報告の中で、大きな問題として主に日本の人口減少を考えているようだが、それ以外にも経済成長を阻害する根本的な問題として、20年以上にわたる「大きな政府」「政府権力の拡大」が挙げられるだろう。

具体的には、まず「増税」の問題だ。ブラド氏も指摘するように、日本はバブル崩壊以降、経済が停滞したままだが、消費増税が大きな影響を与えてきた。

欧米とは違って、消費文化が根付いていない日本で消費税率を上げていけば、消費者はすぐに財布のひもを締め、消費が落ち込み、景気も落ち込んでしまう。2017年には消費税が10%に引き上げられる予定だが、景気が上向かない中で増税すれば、消費が冷え込み、景気が低迷するのは明らかだ。

また、2点目は、政府による民間企業への介入が挙げられる。2012年に安倍政権が発足した当初、アベノミクスの旧3本の矢の中には「規制緩和」が含まれていた。農業や医療への民間の参入、また、企業活動の自由化を目指していたはずだった。

しかし、今年に入ると携帯電話料金の値下げや賃上げ要求など、企業活動への政府の口出しを強化している。この背景には、アベノミクスで経済成長の成果が上がらない、安倍首相の焦りが見え隠れする。

やはり、経済成長を実現するには、民間企業の経済活動を活発化させるために、「小さな政府」を目指さなければならない。

たとえば、税金に関しては、大幅な減税を行い、消費・投資を活発化させることで経済成長を目指すべきだ。消費税率を10%に上げるのではなく、むしろ税率を5%に引き下げるなどすべきだろう。

安倍政権が、「数字上は景気が良くなった」と言って、支持率アップや来年夏に控える参院選を有利に戦おうとしているのは目に見えているが、国民はこれにだまされてはいけない。

政府が民間企業を縛るのではなく、自由に活動させる方向に舵を切れば、日本企業の潜在力が開花するだけでなく、海外の企業や個人が日本を舞台に経済活動を活発化させていくはずだ。そうすれば、GDP600兆円をはるかに上回る繁栄を実現できるだろう。(瑛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『GDPを1500兆円にする方法 「失われた25年」からの大逆転』 綾織次郎著

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