安倍晋三首相がこのほど、「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言。「新たな3本の矢」の政策を発表し、「1億総活躍社会」を目指すことを表明した。新3本の矢とは、(1)希望を生み出す強い経済 (2)夢を紡ぐ子育て支援 (3)安心につながる社会保障、の3つだ。

1本目の「強い経済」では、2014年度に490兆円だった名目GDPを、20年を目標に600兆円まで増やす。そのために、女性や高齢者、障害者らの雇用拡大や地方創生を進めるという。

2本目の「子育て支援」では、1.4程度である合計特殊出生率を1.8にまで回復させることを目標に掲げ、幼児教育の無償化、結婚支援、不妊治療支援などに取り組むという。待機児童の解消も進め、企業での男性の働き方の改善も促す。

3つ目の「社会保障」においては、家族の介護を理由に退職する人を減らし、介護離職ゼロを目指す。厚生労働省は、介護休業を分割で取得できるように、法改正を検討中だという。

経済成長を阻んでいるのは安倍政権!?

「新3本の矢」というと聞こえはいいが、これは政府による事実上のバラマキを強めるもので、2017年4月から消費税率を10%に引き上げるための布石と見ていい。裏を返せば、アベノミクスの第2ステージの柱は「増税」である。

だが、このまま行けば、「新3本の矢」はおそらく折れてしまうだろう。もともと進めていた金融緩和、財政政策、成長戦略で構成する「旧3本の矢」も、2本目の財政政策でかげりが見え、3本目の成長戦略で挫折した。成長戦略を実現するには、本来、個人や企業が自由に経済活動できるように規制緩和を進め、「小さな政府」を目指さなければならない。だが、それを阻んでいるのが、国民を統制する傾向性を持つ安倍政権自身である。

例えば、今年9月の経済財政諮問会議で、安倍首相が、携帯電話料金の値下げの検討を指示したことが報じられると、たった2日間で、国内携帯大手3社の株価が大幅安となり、3社の時価総額が2兆円以上減った。基本的に、首相が民間の経済活動に口を出すことは慎むべきだ。安倍首相に自覚はないかもしれないが、明らかに国民を統制する「大きな政府」をつくろうとしている。

「地獄への道は善意で舗装されている」

この大きな政府は、国民の自由を奪い、長期的に国力をも弱めることは、ソ連やナチスドイツ、そして、サッチャー以前のイギリスの歴史などを見れば明らかだ。政府が「ゆりかごから墓場まで」国民の面倒をみると言っても、国民は決して喜んではいけない。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉を思い返すべきだろう。

政府がなすべきは、国民の自由な経済活動を阻害しているさまざまな規制の撤廃や緩和を進め、個人や企業がアイデアを自由に実現し、切磋琢磨する環境を用意することだ。政治家は、政府主権の「垂直権力」を強化するのでなく、国民主権の「水平権力」の中で、国を繁栄させていくべきである。(泉)

【関連書籍】

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